ふくらはぎの下側のアキレス腱の辺りに痛みが出る場合は、アキレス腱炎の怪我が疑われます。
アキレス腱というと、アキレス腱断裂の怪我が有名です。
ただ、アキレス腱断裂は重症度が高いものの、発生頻度がとても高い怪我ではありません。
発生頻度で言えば、アキレス腱炎の方が高いと言えます。
アキレス腱の痛みがなかなか引かない、走るとアキレス腱が痛い、体重が掛かるとアキレス腱が痛いという場合は、アキレス腱炎の症状が疑われます。
こちらのページでは、アキレス腱炎について運動指導の専門家であるパーソナルトレーナーの視点で解説していきます。
アキレス腱炎とは?
アキレス腱炎とは、簡単に言えばアキレス腱の炎症です。
アキレス腱周囲に過度な負担がかかり、その結果炎症が起こります。
アキレス腱に過度な負担がかかる理由は、普段の姿勢や動きの癖など様々な要因があります。
過去の怪我や競技でのフォームなど、多くの要因が絡んだ結果アキレス腱に負担がかかり、アキレス腱炎を引き起こします。
アキレス腱炎は、捻挫などのように1回の強い負荷がかかった結果起こる怪我ではなく、繰り返しの負荷によって起こる怪我です。
その為、スポーツ障害に分類される怪我と言えます。
アキレス腱炎は軽症であれば激痛が走る訳ではないので、「気になるけど大丈夫」という無理できる部類の怪我と言えます。
ただ、そのまま無理をし続けると大きな怪我の原因となりますので、なるべく放置せずに対処をするべきです。
アキレス腱炎の症状
アキレス腱炎の症状としては、アキレス腱部分の痛みがあります。
また、炎症を引き起こしていますので熱感(熱さ)や赤み、腫れなどの症状も起こります。
腫れてきますので、押すと痛みが増します。
軽症のアキレス腱炎であれば、そこまで強い痛みではないですが、悪化してくると徐々に痛みが強くなります。
最初は走った時だけ、スポーツ中の特定の動きだけだったアキレス腱の痛みが、徐々にあらゆる動きで痛みが出てきます。
最終的には安静時痛という、何もしていなくてもアキレス腱に痛みが出るようになります。
何もしていなくても痛みが出る場合は、重症度が上がっているアキレス腱炎と言えます。
また、足首の背屈動作というつま先を立てる動きで痛みが増す場合は、アキレス腱炎の可能性が高いです。
アキレス腱炎とアキレス腱断裂の違いとは?
アキレス腱炎と似ている怪我で、アキレス腱断裂の怪我があります。
似ていますが、違いは名前の通りです。
アキレス腱炎とはアキレス腱の炎症で、アキレス腱断裂はアキレス腱が断裂してしまう怪我です。
アキレス腱炎は、アキレス腱周辺に炎症が起こっているだけですので、軽症であればそこまで大きな怪我ではありません。
ただ、アキレス腱断裂はかなり重症な怪我です。
そもそもアキレス腱とは何かというところですが、アキレス腱とはふくらはぎの筋肉が踵の骨に繋がる部分の「腱」です。
腱とは、身体の組織の1つで、筋肉と骨のつなぎ目にあります。
イメージとしては、筋肉の端が腱に代わり、その腱が骨にくっつきます。
スマホの充電器で言えば、コードが筋肉、スマホが骨、この2つを繋ぐコネクタ部分が腱と言えます。
腱は体中のあらゆるところにありますが、その中で最も有名な腱がアキレス腱です。
腱は元々強固な組織ですので、簡単に切れるようなものではありません。
ただ、強い負荷がかかれば断裂の可能性があります。
このアキレス腱への強い負荷で断裂してしまうのが、アキレス腱断裂です。
断裂するほどではないですが、負荷がかかり続けて炎症を起こしているのがアキレス腱炎です。
軽症のアキレス腱炎を放置して痛みが増していくと、ある日アキレス腱断裂の大怪我に繋がるということも考えられます。
アキレス腱断裂とは?
アキレス腱断裂とは、過度な収縮などのストレスにアキレス腱が耐えきれずに断裂してしまう大怪我です。
アキレス腱断裂は、破裂したような音がすることが多いですが、特に音がしない場合もあります。
アキレス腱は人体最大の腱で、1トンの牽引力にも耐えると言われていますが、その強固な腱が断裂してしまうくらいの大けがです。
アキレス腱断裂に関しては、こちらで解説されています。
アキレス腱炎の原因
アキレス腱炎の原因は、アキレス腱への過度な負担です。
アキレス腱はふくらはぎの筋肉と繋がっていますので、ふくらはぎへの過度な負担がそのままアキレス腱への過度な負担となります。
アキレス腱には普通に立ったり歩いたりしているだけでも負担がかかります。
ただ、これだけではアキレス腱炎を起こすような過度な負担にはなりません。
アキレス腱炎になるほどの過度な負担としては、次のようなものが組み合わさって起こると考えられます。
・姿勢不良(特に腰が前方にずれる姿勢)
・動きの癖(重心の左右、前後のずれ)
・過去の足の怪我(逆足の怪我)
・ふくらはぎの柔軟性不足
・足裏の柔軟性不足
・外反母趾
・偏平足
・過体重
これらのアキレス腱炎の原因が1つだけあってもアキレス腱炎は起こらないことが多いですが、2つ3つと複合していくことでアキレス腱炎のリスクは上がります。
運動不足で柔軟性が低下した上に体重も増えた状態で、強度の高い運動をした後にアキレス腱炎を発症するというのは多いパターンです。
また、有痛性三角骨障害や有痛性外脛骨障害などで手術を受けて、骨を摘出した後もアキレス腱炎は起こりやすいです。
手術で動きがよくなりますが、今までと違う負荷がかかることでアキレス腱に負担がかかりアキレス腱炎を起こすということも多いです。
アキレス腱炎の対処方法
アキレス腱炎の対処方法としては、まずは治療を施す必要があります。
これはどのような怪我でも同じですが、怪我をしていきなり動かすのではなくまずは治療です。
その後患部のリハビリや、患部外のリハビリなどを経て復帰という流れが必要です。
アキレス腱炎の原因であったように、アキレス腱周囲だけの問題でアキレス腱炎が起こる訳ではありません。
その為、アキレス腱炎の治療を終えた後は、間接的にアキレス腱炎を起こした原因を改善していきます。
過体重でアキレス腱炎を起こしていれば、ダイエットが必要かもしれませんし、姿勢不良が原因なら姿勢改善のトレーニングが必要です。
アキレス腱炎の治療方法
アキレス腱炎になってしまったら、まずはアキレス腱炎の治療をします。
ただ、基本的には炎症が起こっていますので、まずは炎症を抑えます。
炎症を抑えるには、RICE処置が有名です。
RICE処置は応急処置方法の頭文字をとったものです。
R(rest)…安静
I(ice)…冷却、アイシング
C(compression)…圧迫
E(elevation)…挙上
RICE処置については、こちらで解説しています。
RICE処置はどのような怪我でも基本となる応急処置方法です。
アキレス腱炎のリハビリ方法とは?
アキレス腱炎の症状が落ち着いたら、アキレス腱炎のリハビリが必要です。
アキレス腱炎のリハビリでは、患部であるアキレス腱周囲と、アキレス腱炎の原因となった患部外の問題があります。
アキレス腱周囲の問題は、次のようなものがあります。
・ふくらはぎの柔軟性低下
・ふくらはぎの筋力低下
ふくらはぎのストレッチで柔軟性を向上し、トレーニングで筋力をアップすればこれらの問題は改善します。
ただ、これだけでアキレス腱炎が解決はしません。
改善はしても、解決とは言えません。
先ほどのアキレス腱炎の原因であったものでは、患部外にもこのような問題があります。
・姿勢不良
・動きの癖
・過去の怪我
・外反母趾
・偏平足
・過体重
姿勢不良は全身の問題ですが、ざっくり言えば股関節周囲の筋力・柔軟性不足が絡んでいることが多いです。
股関節の筋肉であるお尻やももの筋力がアップすれば、姿勢も改善します。
動きの癖は、筋力・柔軟性が改善した後に練習していきます。
基本的には筋力不足や柔軟性不足が変な動きの癖を作りますので、それを改善するには先に筋力・柔軟性の改善が必要です。
具体的には片足立ちの動作、スクワット動作などが改善すると、アキレス腱炎の再発予防になります。
また、外反母趾や偏平足は改善が難しい類のものですが、インソールや足回りのトレーニングなどで改善可能です。
そして過体重はダイエットが必要です。
ダイエットは運動よりも食事の方が重要と言われていますので、運動だけでなく食事改善も必要です。
多くの方は栄養不足のカロリーオーバーに陥っていますので、必要な栄養を取りながら総カロリーを減らしていきます。
具体的には、糖質制限が必要ですが、過度な糖質制限でマイナスの効果を発揮していることも多いです。
糖質の摂り過ぎもNGですが、糖質は元々身体に必要な栄養素です。(3大栄養素)
これら全ての面を含めて改善することで、アキレス腱炎の再発予防対策となります。
アキレス腱炎の解説まとめ
・アキレス腱炎はアキレス腱周囲の炎症のこと
・アキレス腱炎の症状はアキレス腱に痛みが出て、悪化すれば何をしていなくても痛くなる
・アキレス腱炎を放置するとアキレス腱断裂の可能性も上がる
・アキレス腱炎の原因は色々あり、過体重や姿勢の崩れなども影響する
・アキレス腱炎の対策もそれぞれの原因に合わせた対策が必要
コメント