上腕二頭筋長頭腱炎について解説していきます。
名前も難しく馴染みが薄い症状ですが、実は多く起こる症状でもあります。
重たいものを持つ機会が多い人や、野球・テニス・バレーボールなどのスポーツで起こりやすい怪我と言えます。
発生頻度は少ないものの、慢性化しやすく厄介な怪我の1つです。
そんな上腕二頭筋長頭腱炎について、パーソナルトレーナーの視点で解説していきます。
上腕二頭筋長頭腱炎とは?
上腕二頭筋長頭腱炎とは、腕の筋肉である上腕二頭筋の付け根で起こる炎症です。
名前が難しいですが、読み方は「上腕二頭筋長頭腱炎(じょうわんにとうきんちょうとうけんえん)」です。
上腕二頭筋とは、腕の力こぶの筋肉で比較的メジャーな筋肉だと思います。
ただ、上腕二頭筋が肩まで繋がっている筋肉ということはあまり知られていません。
この上腕二頭筋が肩まで繋がっている部分が、上腕二頭筋長頭腱という部分です。
つまり肩の痛みの一種とも言えます。
上腕二頭筋長頭腱炎は野球選手やバレーボール選手、テニス選手などのオーバーヘッドスポーツと呼ばれるスポーツに多く、また日常生活でも重たいものを持つ機会が多いと上腕二頭筋長頭腱炎になりやすいと言われています。
上腕二頭筋長頭腱炎の症状
上腕二頭筋長頭腱炎の症状としては、肩の痛みがあります。
「肩」というと範囲が広いですが、肩の付け根前側あたりの痛みです。
軽症であれば動かさなければ痛みはあまり出ません。
多い症状としては、動作時痛という動かした時に生じる痛みです。
物を持ち上げた時の痛み、野球でボールを投げた時の痛み、テニスでサーブやスマッシュを打った時の痛み、バレーボールでサーブやスパイクを打った時の痛みなどが主な症状です。
また、夜間痛という夜寝る時に痛みが出る症状もあります。
重症化すれば、安静時痛という何もしなくても痛みが出る場合もあります。
上腕二頭筋長頭腱炎の原因
上腕二頭筋長頭腱炎の原因は、上腕二頭筋の長頭腱に過度な負担がかかることです。
上腕二頭筋長頭腱は、腕の骨である上腕骨の「結節間溝(けっせつかんこう)」という細い通り道を通って肩に繋がります。
この道がかなり細く、肩の位置がずれたり肩の動きが悪かったりすると上腕二頭筋長頭腱が結節間溝で擦れます。
この擦れが繰り返されると摩擦で炎症が起こり、上腕二頭筋長頭腱炎となります。
その為、ただの使い過ぎ(オーバーユース)が上腕二頭筋長頭腱炎の原因とも言えます。
それでも、ただ使い過ぎただけでは上腕二頭筋長頭腱炎のなることは稀です。
上腕二頭筋長頭腱炎の原因としては、姿勢の崩れ(肩の位置のずれ)と肩の動きの悪さが原因と言えます。
肩の位置が正しい位置からずれ、肩に負担がかかるような動かし方を繰り返したことによって摩擦が起こり、上腕二頭筋長頭腱炎になることが多いです。
その為、上腕二頭筋長頭腱炎を治すには肩の位置を正す姿勢改善、肩の動きを改善する動きの改善のリハビリが必要です。
上腕二頭筋長頭腱炎の治療方法
上腕二頭筋長頭腱炎の治療方法としては、炎症が起こっているので安静にする必要があります。
炎症が起こった場合には、RICE処置というものが行われます。
RICE処置とは、処置の頭文字をとったものです。
R(rest)…安静
I(ice)…冷却(アイシング)
C(compression)…圧迫
E(elevation)…挙上
患部を動かさず安静にし、アイシングで患部を冷やします。
テーピングやバンテージなどで圧迫し、心臓よりも高い位置に挙上します。
上腕二頭筋長頭腱炎の処置であれば、挙上は勝手にされています。
ただ完全な安静は難しいので、極力動かさないようにする程度です。
アイシングや圧迫でしっかり炎症を抑えることが、上腕二頭筋長頭腱炎の処置としては重要です。
最近ではこのRICE処置を批判する研究もありますので絶対的に正しい保証はありませんが、一般的な処置方法としてご紹介します。
上腕二頭筋長頭腱炎のリハビリ方法
上腕二頭筋長頭腱炎のリハビリとしては、先ほどの上腕二頭筋長頭腱炎の原因であったように姿勢改善と動きの改善です。
上腕二頭筋長頭腱炎になりやすい姿勢とは、肩の位置が内側に巻かれるような「巻き肩」の姿勢です。
そして巻き肩になりやすいのが、猫背の姿勢です。
巻き肩は、多くの人がスマホを使い時間が多く「スマホ巻き肩」と呼ばれることが多いです。
猫背は、デスクワークやパソコン・スマホなどの影響でかなりの日本人が猫背になっています。
そして猫背の原因には丸まった背骨だけでなく、背骨が繋がる骨盤や股関節などにも原因があることが多いです。
姿勢の改善とは、言い換えれば筋肉のバランスの改善です。
弱すぎる筋肉と硬すぎる筋肉が出来ることで筋肉のバランスが崩れ、その結果姿勢が崩れます。
その為姿勢改善には、弱い筋肉を鍛えるトレーニングと硬い筋肉を柔らかくするストレッチが有効です。
また、動きを改善するには先に姿勢を改善する必要があります。
姿勢とは、動きの開始のポジションと言えます。
姿勢が改善し、肩を動かすために連動する背骨や肩甲骨周りの筋肉がしっかり働くことで肩の動きが改善していきます。
さらに、上腕二頭筋長頭腱炎で痛みが出ていた場合は必ずかばう動作を脳が覚えています。
その為、上腕二頭筋長頭腱への負担が減っていても脳はかばう動きをまたする性質があります。
動きを改善する最終段階としては、もう治ったのでかばう必要がないということを脳に覚えさせる必要があります。
このようにして、猫背やスマホ巻き肩などの姿勢を改善し、肩の動きを改善することが上腕二頭筋長頭腱炎のリハビリには必要です。
野球選手は上腕二頭筋長頭腱炎になりやすい?
野球は上腕二頭筋長頭腱炎になりやすいスポーツです。
野球の特に投げる動作で上腕二頭筋長頭腱炎は起こりやすいですので、投手に多い怪我の一つが上腕二頭筋長頭腱炎と言えます。
野球の投手にとって肩の怪我は、選手生命にかかわるほどの大きな怪我に繋がります。
その為、上腕二頭筋長頭腱炎でも慎重にリハビリを行う必要があります。
肩の痛みをかばえば、それが今度は肘の怪我に繋がる可能性もあります。
野球選手で肘の怪我では、いわゆる野球肘(肘離断性骨軟骨炎)などがあり、重症であれば肘内側側副靭帯断裂でトミー・ジョン手術ということになります。
また、野球選手に多い肩の怪我には次のようなものがあります。
どのような怪我やスポーツ障害でも、その症状や原因について詳しく知り、適切な治療やリハビリ行うことが重要です!
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