スポーツ中に起こりやすい怪我である肩関節唇損傷について解説していきます。
肩関節唇損傷は特に野球選手の投手に多い怪我で、毎年のようにプロ野球選手が肩関節唇損傷の怪我で長期離脱や手術というニュースが出ます。
これはプロ野球選手に限らず、いわゆるオーバーヘッドスポーツと呼ばれるバドミントンやテニス、バレーボールなどでも多く起こる怪我です。
肩関節唇損傷の怪我は治療が非常に難しい怪我と言われていましたが、現在は治療が難しいものの日常生活に支障が出ない程度の回復は見込めます。
ただ野球選手の特に投手にとっては大きな怪我であることは間違いありません。
肩関節唇損傷とは?
肩関節唇損傷とは、野球選手に多い肩の怪我です。
度重なる投球動作による肩への負担で、肩関節の一部である関節唇が損傷してしまう怪我です。
肩関節唇の読み方は「かたかんせつしん」です。「けんかんせつしん」と読むこともあります。
肩関節唇とは、肩の受け皿に当たる肩甲骨関節窩の輪郭を覆う繊維状の組織のことです。
肩関節唇は上方関節唇、前方関節唇、後方関節唇、下方関節唇などの部位で構成されています。
肩関節唇の役割は、この前後上下に肩がずれないように止めておく車止めのような役割です。
肩関節唇損傷の怪我は、この車止めである関節唇が投球動作などによる度重なるストレスに耐え切れず損傷してしまう怪我です。
この損傷した肩関節唇が、本来の車止めの役割ではなく肩の動きを阻害することで肩の痛みや肩の動きにくさを生んでしまいます。
これが肩関節唇損傷の状態です。
肩関節唇損傷の症状
肩関節唇損傷の症状としては、肩関節の可動域制限があります。
上記の関節唇の役割である方がずれないようにする車止めの役割が、損傷を受けることで肩関節の可動域制限を生みます。
肩を動かすときに引っ掛かりがある、関節がうまく動かないなどが肩関節唇損傷の症状です。
また、強い痛みが出るのも肩関節唇損傷の症状の特徴です。
症状がひどくなると、引っ掛かる感じだけでなくクリック音と呼ばれる音がするようになります。
さらにゴンッという鈍い音がするなど、肩の引っ掛かりの症状が悪化して可動域がさらに制限されていきます。
肩関節唇損傷の症状について、お医者さんの説明の参照です。
関節唇損傷とは、関節内の関節唇という軟骨が関節窩からはがれる病気です。
損傷すると下記のような症状がみられます。
・脱臼したことはないが肩が抜けそうな感じする。
・痛みがある角度で強い痛みが生じ、音がする時もある。
医療法人順和会 京都下鴨病院 「関節唇損傷」
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この説明の通り、痛みが「ある角度」で生じるのも特徴です。
つまり、大丈夫な動きはあるけど痛い動きは痛いという感じです。
野球選手で関節唇損傷を負った後には、投球フォームの変更などなるべく負担のかかりにくい状態で復帰を目指すということも視野に入れる必要がある場合もあります。
肩関節唇損傷の原因
肩関節唇損傷の原因は、大きく2つに分けられます。
1つは、度重なる肩へのストレスで起こるもので、いわゆるスポーツ障害と呼ばれるものです。
投手の投球動作やテニスのサーブなど、何度も肩ヘストレスがかかり続けた結果起こることで肩関節唇損傷の怪我が起こります。
特に後方への無理な動きや過度なねじれで肩関節唇損傷は起こりやすいと言われています。
投球動作やサーブの際は後方でかなり方が捻られますので、そもそも肩関節唇損傷が起こりやすい動作と言えます。
この動作を行う際に、元々肩の可動域制限があったり、胸椎という背骨の柔軟性の低下、胸郭という肋骨周りの柔軟性の低下、肘の怪我などがあったりするとさらに肩へのストレスが増して肩関節唇損傷のリスクが上がります。
もう一つの肩関節唇損傷の原因は、1回の強い肩への衝撃で外傷と呼ばれる分類の怪我です。
ラグビーやサッカーなどのコンタクトスポーツで、相手とぶつかって転倒して手をついた際などに、肩に強い衝撃が加わります。
このような原因でも肩関節唇損傷の怪我は起こります。
また、肩関節脱臼によっても上方関節唇損傷が起こります。
野球では投球動作による障害で肩関節唇損傷が起こりやすいですが、ヘッドスライディングやダイビングキャッチが原因で肩関節唇損傷が起こる場合もあります。
どちらにしても、野球で肩関節唇損傷が起こりやすいのは間違いありません。
肩関節唇損傷のリハビリ方法
肩関節唇損傷のリハビリ方法としては、まずは安静にする必要があります。
傷みが激しかったり、炎症反応が強く出ている場合はまずは安静にする必要があります。
ある程度傷みが引けば、肩関節唇損傷のリハビリを始めます。
リハビリ方法としては、まずは肩に過度な負担がかかることを改善していきます。
肩関節唇損傷の原因でもありましたが、投球動作を行う人すべてが肩関節唇損傷の怪我を負うわけではなく、胸椎や胸郭・肩甲骨などの動きが悪かったり柔軟性が低下したりしていることで肩関節唇損傷のリスクが上がります。
特に胸郭などの動きは悪い場合が多く、この改善が肩関節唇損傷のリハビリ方法としては必須と言えます。
また肘の怪我がある場合も肩関節唇損傷のリスクが上がります。
遊離軟骨(ねずみ)があり、肘に痛みがある状態で投球動作を続けていて肩関節唇損傷の怪我を負うというのはよくあるパターンです。
遊離軟骨は除去手術を受ける必要がありますが、手術のリスクとしては低いですのでそのような怪我がある場合は遊離軟骨除去手術を受ける必要があります。
また、損傷した関節唇は放っておいて治るものではありませんが、リハビリをしたから治るものでもありません。
肩関節唇の手術となる場合もありますが、この場合は医師の診断の上決定します。
肩関節唇損傷のリハビリ方法としては、他にも肩そのものにアプローチする方法もあります。
肩を守る筋肉としては、いわゆるインナーマッスルと呼ばれるローテ―ターカフという筋肉があります。
これらの筋肉が正常に働くことで投球時の肩へのストレスを減らすことが可能です。
また、投球動作で肩関節唇損傷の怪我を負った場合は、投球フォームの改造が必要な場合もあります。
どれだけ肩の機能が上がっても、肩に過度な負担がかかる投球フォームでは再び肩関節唇損傷のリスクが上がります。
肩以外の部分へのアプローチ、肩そのものへのアプローチ、投球フォームの変更などが、肩関節唇損傷のリハビリ方法と言えます。
肩関節唇損傷の怪我をしたプロ野球選手一覧
肩関節唇損傷の怪我は、投球動作で起こりやすく投手に多い怪我です。
ただヘッドスライディングや転倒などでも起こりますので、野手でも起こりやすい怪我と言えます。
ここでは、肩関節唇損傷の怪我をしたプロ野球選手をご紹介します。
斎藤佑樹投手(日本ハム) 右肩関節唇損傷
新井貴浩選手(阪神タイガース) 右肩後方関節唇損傷・腱板不全断裂・肩峰下滑液包炎
森慎二投手(西武ライオンズ) 右肩関節唇損傷で手術が影響し引退
斉藤和巳投手(ソフトバンクホークス) 右肩関節唇損傷で手術が影響し引退
ジェフ・ウィリアムズ投手(阪神タイガース) 左肩関節唇損傷の手術が影響し引退
馬原孝浩投手(オリックス) 右肩関節唇損傷と腱板損傷の手術後に復帰
ユウキ投手(ヤクルト) 右肩関節唇損傷の手術後に復帰
川島亮投手(ヤクルト) 右肩関節唇損傷の手術
中里篤史投手(中日) 右肩関節唇損傷の手術が影響し引退
河内貴也投手(広島) 左肩関節唇損傷の手術後に復帰
伊藤隼太選手(阪神タイガース) 右肩関節唇損傷の怪我
ルナ選手(広島カープ) 転倒で右肩関節唇損傷と右肩鎖関節捻挫の怪我で全治3か月
こう見ると肩関節唇損傷の怪我から復帰して活躍するのは非常に難しいことがわかります。
馬原孝浩投手や河内貴也投手は肩関節唇損傷の怪我から復帰しましたが、斉藤和巳投手やジェフ・ウィリアムズ投手といった有名な投手が肩関節唇損傷の怪我が影響し引退しています。
現役では斎藤佑樹投手が肩関節唇損傷の怪我から復帰して登板していますが、やはり怪我前よりは厳しい結果になっています。
それだけ肩関節唇損傷は大きな怪我と言えますので、そこに至る前に胸郭や肩甲骨・胸椎などの可動域をしっかり引き出すトレーニングや過度の投球の制限、投球フォームの見直しなどが求められます。
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