野球選手などに多い腱板損傷について解説していきます。
腱板損傷とは野球選手などボールを投げるスポーツで起こりやすい怪我です。
加齢に伴う原因で腱板損傷や腱板断裂も起こりますが、若年性で起こるものはほとんどスポーツ中に起こる怪我です。
高齢者には多い症状ですが、野球選手・特に投手にとっては選手生命に関わる怪我になる可能性があります。
そんな腱板損傷について解説していきます。
腱板損傷とは?
腱板損傷とは、肩の筋肉の怪我です。
腱板(けんばん)とは、4つの筋肉の総称で、別名「回旋筋腱板(かいせんきんけんばん)」、「ローテ―ターカフ」「インナーマッスル」などと呼ばれます。
腱板を構成する4つの筋肉は、それぞれ「棘上筋(きょくじょうきん)」「棘下筋(きょっかきん)」「小円筋(しょうえんきん)」「肩甲下筋(けんこうかきん)」と呼ばれる筋肉です。
腱板損傷とはこの4つの筋肉のいずれか、もしくは複数が損傷してしまう怪我です。
腱板損傷では、最初は微細な損傷から始まり、部分断裂、完全断裂と進行していきます。
一発の衝撃で一気に断裂と言う場合もありますが、投球動作などの繰り返しで損傷する場合は、少しずつ損傷して徐々に損傷部分が広がります。
腱板損傷では痛みが最初はわかりにくく、また腱板断裂していても肩は動かせるので気付きにくい怪我と言えます。
腱板損傷の症状|無症候性腱板断裂の可能性も
腱板損傷の症状としては、分かりにくいのが特徴です。
ある日突然激痛が走るというよりは、違和感や動きにくさ、たまにある痛みなどを訴えることが多いです。
また、無症候性腱板損傷と言う症状もあります。
これは、文字通り特に症状が見られない腱板損傷です。
痛みが自覚する程なかったり、動きにくさも自覚する程なかったりと、どう発見すればいいかわからないようなものですが、わずかに症状はあります。
腱板損傷で起こる症状としては「夜間痛」「運動制限」「運動時痛」などがあります。
夜間痛とは、夜間にだけ痛みが出る症状です。
これは寝ている間に肩の内部で起こる炎症により痛みが出ていると言われています。
また、運動時痛も運動制限も特定の角度だけ起こるものが多いです。
手を横から挙げていくときに、途中は痛いけどあとは痛くないというような症状です。
これは、腱板損傷で損傷している筋肉を最も使う角度だけ痛みやひっかりなどの症状が現れ、損傷が無い部分がメインで働く角度では症状が見られないということです。
腱板損傷の原因
腱板損傷の怪我の原因は、大きく2つに分けられます。
1つは障害と呼ばれる、度重なるストレスで起こるものです。
これは投球動作やテニスのサーブ、バドミントンのスマッシュなどの動作を繰り返すことで起こります。
もちろん、このような動作をした人が必ず腱板損傷の怪我をする訳ではありません。
肩の動きがスムーズではない場合に、肩を上げるたびに上腕骨と言う腕の骨と腱板がぶつかるようになります。
これが繰り返されることで、徐々に腱板損傷が進んでいきます。
また、野球のピッチングやテニスのサーブなどは腱板を構成する筋肉が引き伸ばされながら力を発揮します。
専門的にはエキセントリック収縮と言いますが、この負荷が肩のポジションが悪かったり、ローテ―ターカフの筋力が弱かったりといった腱板損傷が起きやすい条件が重なった状態で繰り返されると、腱板損傷のリスクが上がります。
さらに、加齢による影響も考えられます。
若い頃からずっとテニスをしていた方が、年配になって突然腱板損傷の怪我を発症するということもありますが、これも若い頃から積み重なった腱板へのストレスが限界に達して起こります。
腱板損傷の原因2つ目は、転倒などの一度の強い衝撃で起こるものです。
転倒して肩を強打して骨折した時に合わせて腱板損傷も引き起こすということもあります。
スポーツ中でもラグビーやサッカーなど、相手と接触するスポーツでは転倒時に腱板損傷の怪我を負うということもあります。
また、交通事故でも事故の衝撃で肩を強打して腱板損傷ということもあります。
腱板損傷の治療法
腱板損傷の治療方法としては、まずは安静にするしかありません。
夜間痛などがある場合は、痛み止めを飲んだりステロイド注射などで炎症を止める場合もあります。
ただ基本的には安静にし、炎症が治まったらリハビリを開始という流れです。
腱板損傷の場合はこのような手術をしない「保存療法」で治療が行われる場合が多いですが、腱板断裂で筋肉が完全に断裂してしまっている場合は、手術と言う選択肢があります。
腱板断裂の手術では、切れてしまった腱板を修復する手術が行われます。
腱板断裂の手術の場合、繋ぎ合わせた部分が癒合するまで6~8週ほどかかると言われています。
その後にリハビリを開始しますので、野球選手やテニス選手で腱板損傷の手術となった場合は試合復帰までは6か月以上かかる場合があります。
肩腱板損傷の治療方法について、順天堂大学の解説を紹介します。
保存治療と検査
初めに保存療法として筋力増強と可動域訓練を指導します。痛みの強さによってはヒアルロン酸や副腎皮質ステロイド薬の関節内注射が有効なこともあります。精密検査としてはMRIや関節造影検査によって損傷範囲を確認します。ある程度以上の損傷で、長く除痛が得られないか、腕が挙がらないことで生活に不自由の多い例では手術を検討します。
肩腱板損傷|整形外科・スポーツ診療科|順天堂医院
整形外科・スポーツ診療科|肩腱板損傷|順天堂大学医学部附属順天堂医院順天堂大学医学部附属順天堂医院 整形外科・スポーツ診療科「肩腱板損傷」についてご紹介します。順天堂醫院は、一貫して患者さまに何よりもまず、やさしく、安全で高度の医療を提供すべく努力しております。
治療方法としては、手術は最終手段というイメージでしょうか。
まずは手術をしない保存療法が一般的のようです。
腱板損傷のリハビリ方法
腱板損傷のリハビリは、まずは腱板損傷に至る程の負担がかかっていた原因を取り除きます。
これは、腱板損傷の原因でもあったように、肩の動きがスムーズではなかったり、肩のポジションが悪かったりといったところを改善します。
肩関節は球関節と呼ばれる動きの多い関節で、その分多くの筋肉が付着しています。
この中に過度に固い筋肉があったり、過度に弱い筋肉があったりすれば、筋肉のバランスが崩れて動きが悪くなったりポジションが崩れたりします。
これらの原因を突き止めてリハビリやトレーニングを行うことで、腱板へのストレスを減らせます。
また、投球動作などは全身運動で複雑な動きです。
その為、肩に大きな負担がかかる原因が足首や骨盤などにある場合もありますので、全身の動きの評価が必要です。
場合によってはフォーム改造などの必要もあると思います。
腱板断裂で手術となった場合は、しばらくは肩のリハビリは出来ませんのでこのような患部外のリハビリから開始していきます。
このように、腱板損傷のリハビリと言っても幅広く、個人で出来るようなものではありません。
腱板損傷のリハビリには、パーソナルトレーナーや理学療法士などの専門家に身体の詳しいチェックをしてもらってから行うのが最適です。
腱板損傷の怪我を負ったスポーツ選手(野球選手)
ここでは、腱板損傷の怪我をしたスポーツ選手をご紹介します。
野球選手では致命的な怪我の場合があるので、復帰までかなり時間がかかる選手もいます。
ヤクルトスワローズ・由規投手 右肩腱板損傷の怪我から5年振りに復帰
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