靭帯損傷とは?種類・治療方法・症状などを関節別に解説

靭帯損傷とは? 怪我のリハビリ

靭帯損傷は、スポーツ中や日常生活で起こる怪我の中では重症の怪我です。

正確には「靭帯損傷」とは特定の怪我のことではなく、怪我の総称です。

 

骨折や捻挫などと同じような言葉ですので、正式には「○○靭帯損傷」というように特定の靭帯を指して言います。

 

靱帯は身体の各関節を守る上で大事な組織です。

その靭帯が損傷した場合は、部位によってはかなり大きな怪我と言えます。

 

こちらでは、そんな靭帯損傷について解説していきます。

 

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靭帯損傷とは?

靭帯損傷とは?

靭帯損傷とは、身体の中にある「靭帯」が損傷する怪我です。

靭帯損傷が重症の場合は、損傷ではなく完全に断裂してしまうことがあります。

 

この場合は靭帯損傷ではなく「靭帯断裂」と言いますが、断裂も含めて大きく靭帯損傷という場合もあります。

 

靭帯損傷は、捻挫や打撲などの怪我に比べると大きな怪我と言えます。

もちろん靱帯の種類や損傷具合にもよりますが、膝などの大きな靱帯の損傷や靱帯の完全断裂となると重症な怪我になります。

 

場合によっては全治が半年を超えるような大きな怪我にもなります。

 

膝の靱帯を複数同時に損傷するアンハッピートライアドの場合は、全治が1年近くかかります。

 

靭帯損傷は怪我の名前とは言えますが、怪我の総称という方が正確です。

よく「足首の靭帯損傷」などのような表現がありますが、これはかなりアバウトな表現です。

 

足首には多くの靱帯がありますので、正確には「前距腓(ぜんきょひ)靭帯損傷」のようにどの靱帯を損傷したのかを表すのが正式名です。

 

靭帯損傷とはどこかの靱帯を損傷したという意味ですので、骨折や捻挫のように怪我の仕方の名前と言えそうです。

 

またスポーツ選手の怪我が発表される時に靭帯損傷と発表されることも多くあります。

これは怪我の詳細が分かっていないのか、あるいは怪我の詳細を公表したくないなどの思惑が考えられます。

フィギュアスケートの羽生結弦選手が「右足関節外側靭帯損傷」でNHK杯欠場と発表されましたが、これも靭帯損傷というかなりアバウトな発表の仕方です。

 

靱帯とは?

では、その靱帯とはどのような組織なのでしょうか?

「聞いたことはあるけど何だかわからない」という方が多いと思います。

 

靱帯とは、身体の各関節にある組織です。

靱帯の役割としては、関節の保護が主です。

 

靱帯は関節が過度な動きをしないように動きを制限する組織で、天然のテーピングとも言えるかもしれません。

 

例えば、足首の靱帯は足首が捻り過ぎないように動きを制限する靱帯があります。

それが先ほどの前距腓靭帯(ぜんきょひじんたい)です。

 

前距腓靭帯があるおかげで、足首は過度な動きをしないで済みます。

その結果、足首にある骨や筋肉などが傷付くのを防いでくれます。

いわばストッパーのような組織です。

 

靱帯は各関節にあり、細かい小さな靱帯から強固な大きい靱帯まで幅広いです。

その1つずつに名前が付いており、聞いたこともないようなマイナーな靱帯もたくさんあります。

 

この関節のストッパーである靱帯が損傷するのが、靱帯でも支えきれない程の負荷が関節にかかった場合です。

先ほどの足首の例でいくと、軽くひねったくらいであれば靱帯が支えますので特に問題はありません。

歩いていて何かに引っかかって足首を捻ったことがある人は多いと思いますが、その都度大きな怪我になる訳ではありません。

ただ、体重がかなりかかったり、走っていたりと強い負荷がかかって足首を捻った場合は靱帯がその不可に耐え切れず損傷してしまいます。

 

これが靭帯損傷の怪我となります。

これは1回で強い負荷がかかる場合と、繰り返しの負荷で靭帯が少しずつ損傷していく場合があります。

多くの場合はこの複合で、繰り返しの負荷で少しずつ靱帯が傷付き、最後のトドメで強い負荷がかかって靭帯損傷となります。

 

靭帯損傷と捻挫の違いとは?

膝の痛み

靭帯損傷と捻挫の違いはよく分からないという方も多いと思います。

少しややこしい話ですが、靭帯損傷と捻挫はほぼ同じことを言っています。

 

捻挫とは関節をひねるなどの過度なストレスがかかることで起こる怪我の総称です。

捻挫をすると靭帯や関節の中の組織など複数の組織を損傷します。

骨折を伴う場合もあります。

ただ、多くは靭帯の損傷がメインとなります。

 

つまり、捻挫をした結果靭帯を損傷したという関係性になります。

そのため、捻挫と靭帯損傷は結果的にほぼ同義語となります。

 

例えば「右足首捻挫」と「右足関節靭帯損傷」はほぼ同じことを言っています。

 

スポーツ中に起こりやすい靭帯損傷

バスケットボールの膝の怪我

スポーツは怪我と常に隣り合わせとも言えます。

特に競技レベルが上がれば上がるほど、怪我のリスクも増えます。

この怪我の中で、靭帯損傷は多くの割合を占めます。

もちろん、交通事故や日常生活中の事故や不注意で靭帯を損傷することもあります。

 

スポーツの種類やポジションにもよりますが、主にスポーツ中に起こりやすい靭帯損傷がこちらです。

 

・足首の靭帯損傷(足首捻挫)

・膝の靭帯損傷

・肘の靭帯損傷

 

スポーツ中に起こる足首の靭帯損傷(捻挫)

スポーツ中に起こる靭帯損傷で最も多いものが足首の靭帯損傷と言っていいと思います。

いわゆる捻挫です。

 

足首の捻挫はあらゆるスポーツで起こりやすい怪我です。

ステップワークが必要なサッカーやテニス、バドミントン、ラグビーなどでも起こりますが、ジャンプ動作の多いバレーボールやバスケットボールなどでも多く起こります。

 

その他陸上競技など走る動作でも起こる可能性はあり、あらゆるスポーツのあらゆるシーンで起こりやすい怪我です。

 

スポーツ中に起こる膝の靭帯損傷

スポーツ中に起こる膝の靭帯損傷は、スポーツ中に起こる怪我の中でもかなり重症の部類に入る怪我です。

膝にある主な靭帯は、前十字靭帯・後十字靭帯・内側側副靭帯・外側側副靭帯の4つです。

スポーツ中に最も起こりやすいのが内側側副靭帯損傷で、これは多くのスポーツで起こります。

膝をひねることで起こる怪我ですので、起こりやすいスポーツは足首の捻挫と似ています。

ステップワークや切り返し動作の多いサッカーやバスケットボール、ラグビーなどでは多い怪我です。

また、ジャンプ動作でも起こりやすい怪我ですのでバスケットボールやバドミントン、バレーボールなどでは多い怪我です。

膝の前十字靭帯損傷は、スポーツ中に起こる怪我では最も重い部類の怪我で全治が8ヶ月以上になることもあります。

 

スポーツ中に起こる肘の靭帯損傷

スポーツ中に起こる肘の靭帯損傷は、主に投擲(とうてき)種目で起こります。

これはオーバーヘッドスポーツと専門的には呼ばれ、頭の上での動作が多いスポーツのことです。

野球でボールを投げる、テニスやバドミントンのサーブやスマッシュは頭の上での動作になります。

この場合、肩の動きが悪かったりフォームが悪かったりすると肘に過度な負担がかかります。

その結果、肘の靭帯損傷に繋がることがあります。

 

野球のピッチャーで特に多い怪我で、肘の靭帯が断裂するほどの怪我になると、全治が1年を越える重症となります。

 

靭帯損傷の種類

テーピング

靭帯損傷の種類は、そのまま靱帯の種類に対応します。

つまり、身体にたくさんあるどこの靱帯を損傷したかが靭帯損傷の種類ですので、靱帯の数だけ靭帯損傷があります。

 

指先や足先などの細かい靭帯損傷は例が少ないですが、メジャーな靱帯やよく起こる靭帯損傷は、何となく聞いたことがあるような名前が多いと思います。

 

こちらでは、主な靭帯損傷の種類をご紹介します。

 

膝の靭帯損傷の種類

膝の靭帯はスポーツ中でも日常生活でもかなり損傷しやすい靭帯です。

特にスポーツ中の膝の靭帯損傷は大きな怪我に繋がります。

主な膝の靭帯は4つありますので、1つずつ見ていきます。

 

膝内側側副靭帯損傷

膝の靱帯が4つある中で、特に損傷することが多いのが、内側側副靭帯です。

軽症であれば数日でスポーツを再開出来ますが、重症の場合は全治数か月~半年くらいかかる場合があります。

 

膝内側側副靭帯損傷についてはこちらから

 

膝前十字靭帯損傷

膝の靱帯の中で最も強固な靱帯が、この前十字靭帯です。

 

その前十字靭帯損傷となると、かなりの重症の怪我です。

前十字靭帯損傷となると全治は半年以上かかり、手術となるケースも多いです。

 

前十字靭帯損傷に加えて、半月板損傷や内側側副靭帯損傷なども合わされば、全治は1年近くになります。

 

前十字靭帯損傷の解説はこちらから

 

膝外側側副靭帯損傷

発生頻度は内側側副靭帯損傷や前十字靭帯損傷よりも少ないですが、膝の外側側副靭帯損傷も起こります。

この外側側副靭帯損傷はサッカーやラグビーなどの接触プレーで損傷する場合が多いです。

発生頻度は低いですが、長期化する厄介な怪我になる場合が多いです。

 

膝外側側副靭帯損傷の解説はこちらから

 

膝後十字靭帯損傷

膝の靭帯損傷の中では、発生頻度が低いのが後十字靭帯損傷です。

後十字靭帯損傷は、転倒で膝から落ちた場合などに起こります。

 

自転車で転倒した膝を強打した場合などかなりケースは限られますが、それでも膝の不安定性が出るなどの症状があります。

 

よく起こる靭帯損傷「足首」「肘」その他の靭帯損傷一覧

靭帯損傷の怪我は、膝だけではなく他の関節でも起こります。

膝以外で靭帯損傷が多いのは、足首と肘です。

特に足首は、発生頻度で言えば膝よりも多いと思います。

 

足首の靭帯損傷

足首の靱帯損傷は、主に足首の外側の靱帯で起こります。

 

この外側には主に3つの靱帯があります。

最も損傷しやすいのが前距腓靭帯(ぜんきょひじんたい)で、次いで踵腓靭帯(しょうひじんたい)、後距腓靱帯(こうきょひじんたい)となります。

 

また、足首の内側の靱帯が損傷する場合もあります。

足首の内側にある靱帯をまとめて三角靱帯と呼びます。

 

この足首の外側の靭帯損傷を、足関節内反捻挫と言います。

いわゆる足首の捻挫です。

 

足首の内側の靭帯損傷が足関節外反捻挫です。

 

肘の靭帯損傷

肘の靱帯損傷では、肘内側側副靭帯損傷が多いです。

 

内側側副靭帯は膝でもありましたが、肘にも内側側副靭帯はあります。

この肘の内側側副靭帯損傷の場合に受ける手術が、最近プロ野球選手が多く受けているトミー・ジョン手術です。

かつては投手生命が終わりくらいの大怪我でしたが、今ではトミー・ジョン手術もあり復帰可能な怪我になっています。

 

関節別靭帯損傷が起こりやすい靭帯

靭帯は各関節にあります。

関節ごとに損傷しやすい靭帯も変わります。

主要な関節で損傷しやすい靭帯を紹介していきます。

 

足首(足関節)で損傷しやすい靭帯

・前距腓靭帯

・踵腓靭帯

・後距腓靭帯

・二分靭帯(三角靭帯)

 

また、足首の靭帯損傷に伴ってすねの靭帯である脛腓靭帯を損傷することもあります。

 

膝関節で損傷しやすい靭帯

・前十字靭帯

・内側側副靭帯

・外側側副靭帯

・後十字靭帯

 

肘関節で損傷しやすい靭帯

・内側側副靭帯

 

靭帯損傷が起こった場合の治療方法

靭帯損傷が起こった場合の治療方法としては、初期の応急手当とその後の治療・リハビリにわかれます。

初期の応急処置としてはRICE処置というものがあります。

これは応急手当の頭文字をとったものです。

 

Rがrest(安静)、Iがicing(アイシング)、Cがcompression(圧迫)、Eがelevation(挙上)です。

このような応急処置を施すことで、悪化を防ぎ回復を早めると言われています。

 

また、その後は同じような処置を続けつつ病院を受診して精密検査を受けることも必要です。

靭帯損傷は、はっきりと診断を確定させるにはMRI検査が必要です。

外から見てこれは明らかのこの靭帯を損傷しているので間違いないということが多いですが、確定はMRI検査です。

 

また、症状が落ち着いたら再発防止のためのリハビリが重要になります。

 

靭帯損傷の場合、病院はスポーツ外来か整形外科へ

靭帯を損傷した場合にかかる病院は整形外科になります。

スポーツ外来があれば、スポーツ外来でも大丈夫です。

スポーツ以外で怪我をした場合でも、靭帯を損傷していればスポーツ外来に専門の医者やスタッフがいます。

 

整形外科の場合は、中にはレントゲンを撮って湿布を出して終わりという医者もいます。

これは意外と知られていないですが、レントゲン検査で靭帯の損傷は分かりません。
レントゲン検査は、基本的には骨折など骨に異常があるかどうかを調べる検査です。

もちろんそれ以外の情報が分からない訳ではないですが、レントゲン検査をした「捻挫だね」というのは本来おかしい話です。

「骨折がないことが分かったので、おそらく捻挫ではないかと推測できる」が本来のレントゲン検査で分かることです。

 

靭帯損傷で手術が必要な場合

靭帯損傷を負うと、手術となる場合もあります。

これは、靭帯の損傷の中でも特に重症な完全断裂だと手術になる場合が多いです。

 

靭帯損傷では文字通り靭帯を損傷しています。

しかし、正確には部分断裂という場合が多いです。

 

部分断裂で手術となることもなくはないですが、ケースとしては稀です。

実際に手術となるのは完全断裂です。

完全断裂だと靭帯のつながりが途絶えていますので、切れた靭帯を繋ぎ合わせる手術が行われます。

 

靭帯再建手術

靭帯が完全断裂して手術となる場合は、靭帯再建手術が行われます。

再建手術は、切れた靭帯を繋ぎ合わせることもありますが、他の組織を切り取り新たな人体を作ってくっつけるという場合もあります。

 

再建手術で特に有名なのは、膝の前十字靭帯を断裂した場合の再建手術です。

いくつか方法がありますが、最近ではもも裏の筋肉の腱を取り、それを新たな前十字靭帯として膝にくっつける再建手術が多く行われています。

もちろん再発のリスクも高い怪我ですが、再起不能に近かった怪我がこの再建手術によって元通りに近い形でスポーツに復帰できている選手も多いです。

 

靭帯損傷から復帰までの期間目安

靭帯損傷から復帰するまでの期間、つまり全治は靭帯によります。

また、靭帯の損傷度合いにもよって変わります。

 

靭帯の損傷度合いは大きく3種類に分けられることが多いです。

 

最も軽い症状の靭帯損傷をⅠ度損傷、中程度をⅡ度損傷、重傷をⅢ度損傷と分類します。

1・Ⅱ・Ⅲと格好をつけた表記ですが、読み方は「いちど損傷、にど損傷、さんど損傷」と普通です。

 

Ⅰ度損傷の場合は軽症ですので、数日から数週間で復帰できることが多いです。

これは靭帯の種類にもよりますが、足首の靭帯損傷で1度損傷であれば最短3日くらいで復帰可能です。

 

Ⅱ度損傷の場合は数週間から2か月くらいの全治期間が必要になります。

Ⅱ度損傷まで行くと、すぐに復帰はできません。

足首や膝の靭帯のⅡ度損傷はがんばって自力で立てるというレベルの症状であることが多く、怪我をした本人が「ちょっとこれは重症かもしれない…」と分かるレベルです。

 

Ⅲ度損傷の場合は、完全断裂かそれに近いかなり重症な靭帯損傷です。

Ⅲ度損傷の場合は3か月から半年以上の全治となるケースが多いです。

特に膝の前十字靭帯断裂などの場合は全治が8か月以上となることも多く、スポーツに復帰するまではかなり時間がかかります。

 

この記事を書いた人
中谷圭太郎

東京の東中野・落合にあるピラティス&コンディショニングスタジオhc-life代表トレーナー。スタジオ経営、パーソナルトレーニングレッスンの傍ら、公式ブログを中心にトレーニングや健康に関する情報を発信中。

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