多くの方が悩まされる脱臼について解説していきます。
怪我の種類は骨折や肉離れ、捻挫などがありますがこちらのページでは「脱臼」についてご紹介します。
脱臼というと肩の脱臼が一般的ですが、脱臼はどの関節でも起こる怪我です。
脱臼が厄介な怪我であるのは再発率が高く、いわゆる脱臼が癖になる状態です。
その脱臼の再発を防ぐには、適切な応急処置や治療、リハビリなどが重要になります。
ここでは、脱臼の症状や種類、分類方法、応急処置方法から治療方法、リハビリ方法などをご紹介します。
脱臼とは?
脱臼とは、関節が外れて骨の位置が本来ある位置から逸脱した状態です。
脱臼というと、肩の脱臼が一般的ですが脱臼はどの関節でも起こる怪我です。
具体的には、股関節や指の関節などでも起こりやすい怪我です。
特に赤ちゃんの場合は股関節脱臼が多く、先天的股関節が多いです。
脱臼は外傷性脱臼という、外からの強い衝撃で関節の位置がずれて起こる脱臼と、何らかの疾患が原因で起こる脱臼があります。
多くの場合は、外傷性の脱臼が起こります。
スポーツ中に起こる脱臼は、この外傷性脱臼です。
脱臼の症状
脱臼の症状としては、強い痛みが出ます。
冷や汗が出て、明らかに何か大きな怪我が起こったとわかるような場合が多いです。
脱臼はただ関節が外れるだけではなく、関節が外れる時に周りの靱帯などの軟部組織を一緒に損傷しています。
その影響もあって、かなり強い痛みを伴います。
また、関節が外れるので変形が見てわかります。
脱臼に伴って骨折していることもあり、それでさらに変形が強く出ることがあります。
これがいわゆる脱臼骨折という状態です。
骨折も強い痛みが症状としてありますが、脱臼も骨折もとなるとより強い痛みが出ます。
また、痛めた際にガクッと音がするのがわかることもあります。
脱臼の種類・脱臼の分類方法
脱臼の種類は、脱臼の起こる関節で分類する方法や脱臼の程度、脱臼の原因によって分類する方法があります。
ここでは脱臼の分類方法を1つずつご紹介します。
脱臼の程度による分類方法
・完全脱臼
・不完全脱臼(亜脱臼)
完全脱臼とは、文字通り完全に脱臼している状態です。
関節を構成する骨同士の接地面がなく、完全に関節が外れている状態です。
これに対し、不完全脱臼(亜脱臼)は関節が外れかかっているものの僅かにでも関節の接地面が残っている状態です。
多くの場合は不完全脱臼とは言わずに「亜脱臼」と表現します。
亜脱臼は肩関節脱臼や手足の指の脱臼でよく起こりますが、脱臼の手前の症状や軽症の脱臼という位置付けになります。
原因による脱臼の分類方法
・外傷性脱臼
・病的脱臼
外傷性脱臼とは、外からの強い衝撃が原因で起こる脱臼のことです。
スポーツ中に起こる脱臼や、日常生活で転倒やぶつけて起こる脱臼はこの外傷性脱臼に分類されます。
これに対し病的脱臼は、最終的には外力により脱臼するものの、元々靱帯や関節に病的な変化があり、それが原因で脱臼が起こるものを指します。
部位による脱臼の分類方法
・手指脱臼
・足指脱臼
・股関節脱臼(先天性股関節脱臼)
最も多い脱臼が、肩関節脱臼です。
肩関節脱臼とはスポーツ中に多く起こる脱臼で、ラグビーやサッカーなど接触プレーや転倒の多いスポーツで起こりやすい脱臼です。
肩関節脱臼に近いですが、少し違う位置で起こる脱臼が肩鎖関節脱臼です。
肩鎖関節脱臼とは、肩甲骨と鎖骨を結ぶ肩鎖関節で起こる脱臼です。
肩鎖関節脱臼も、ラグビーやサッカーなどの接触プレーや転倒が多いスポーツで起こりやすい脱臼です。
また、これらの脱臼はスポーツ中に限らず日常生活でも転倒などで起こりやすい脱臼です。
手指の脱臼や、足指の脱臼はぶつけて起こることが多いです。
手指の脱臼は、いわゆる突き指が重症の場合に起こる怪我です。
足の指も、机の角に小指をぶつけて痛いような症状が重症の場合に起こります。
股関節脱臼は、赤ちゃんに多い脱臼ですが成人ではほとんどありません。
成人で股関節が脱臼する場合は、交通事故などのよほど強い衝撃が加わらないとこりません。
また、赤ちゃんの場合は先天性股関節脱臼が起こります。
先天性股関節脱臼とは、生まれたばかりの乳児で起こる脱臼です。
このころは、関節も弱く柔らかいので成人ではまず起こらないような股関節脱臼が起こりやすい状態です。
また、これは痛みも少なく気づかないうちに先天性股関節脱臼が起こっている場合があります。
先天性股関節脱臼は、大人になってから股関節の左右差が出て脚長差(足の長さが左右で違う状態)などが起こる原因ともなります。
脱臼の応急処置方法・整復方法
脱臼の応急処置方法としては、まずは脱臼を整復する必要があります。
脱臼は関節が本来の位置から逸脱している状態ですので、正しい位置に戻す必要があります。
ただ、簡単に関節が外れないように整復するのも難しいです。
また、無理に整復しようとすると周りの靱帯などの組織を損傷する場合もあります。
その為、脱臼がわかった場合や脱臼の疑いがある場合はすぐに整形外科や整骨院を受診します。
脱臼の整復が認められているのは、基本的に医師と柔道整復師だけです。
その専門家に脱臼の整復は任せましょう。
反復性脱臼の場合は、自力で整復できることもありますが、初回の脱臼の場合は自力での整復は難しいです。
脱臼は整復後も炎症が起こっていますので、整復しても応急処置は終わりではありません。
脱臼の整復後の応急処置としてはRICE処置が一般的です。
RICE処置とは、応急処置の頭文字をとったものです。
R(安静)、I(冷却)、C(圧迫)、E(挙上)の4つです。
安静は、患部をなるべく動かさずに安静にします。
冷却はいわゆるアイシングです。
圧迫は、バンテージやテーピング、サポーターなどで安静にします。
挙上は心臓よりも患部を高くします。
脱臼の治療方法
脱臼の治療方法としては、安静固定にします。
肩関節脱臼では外旋位固定法という、やや外側に向けた状態で固定する方法が多く取られます。
その他の脱臼でも、整復して正しい位置に関節を戻したら安静に固定します。
固定するには固定具が必要ですので、サポーターやギブスなどを使って固定します。
亜脱臼など軽症であれば、三角巾の固定だけの場合もあります。
脱臼のリハビリ方法
脱臼は癖になると言われますが、脱臼が癖にならないようにはリハビリが重要です。
脱臼をすると、脱臼をしないように関節を守っていた靱帯なども一緒に損傷します。
その為、脱臼をするとより脱臼をしやすい状態になります。
また、元々脱臼をしやすい動きの癖や筋肉のアンバランスがあった可能性も高いですので、これらを改善すべくリハビリをしていきます。
リハビリの初期としては、安静固定していましたので少しずつ動かすことから始めます。
徐々に動かし日常生活動作が問題なくできるようになったら、再発予防のリハビリがメインになります。
脱臼の再発予防のリハビリとしては、脱臼しやすい動きを筋力で止めるような方法になります。
基本的に損傷した靱帯はそのままですので、靱帯が担っていた役割を筋肉で補います。
例えば肩関節脱臼の場合は、肩を後ろに持っていかれるような動作で脱臼します。
これを防ぐ為には、肩周りの筋肉が協調して働く必要があります。
特に肩の後面の三角筋後部繊維やローテ―ターカフ、全面の胸筋群などが協調して働き、肩関節の正しいポジションを維持する必要があります。
また、筋肉が正しいタイミングで働くことも必要です。
肩が外れる瞬間に、外れないように筋肉が働いてほしいので、いくら筋力があっても肩が外れそうな瞬間にその筋肉が働いてくれないと意味がありません。
そのようなコーディネーションエクササイズと呼ばれるようなリハビリも行うことで、脱臼予防のリハビリとなります。
ただ、これはある程度回復したうえでの身体の状態や筋力・柔軟性の問題などを詳しくチェックする必要があります。
脱臼予防、脱臼再発防止のリハビリは身体の専門家であるパーソナルトレーナーや理学療法士に依頼することがお勧めです。
脱臼の怪我をしたスポーツ選手の例
脱臼は様々な関節で起こるので、脱臼が起こりやすいスポーツも部位や種類によって異なります。
ここでは、脱臼の怪我をいたと報道されたスポーツ選手の例を一部ご紹介します。
これはプロに限らず、アマチュアでも似たような形で脱臼するケースは多いと思います。
五郎丸歩選手(ラグビー) 右肩鎖関節脱臼で手術 全治3か月
田中史朗選手(ラグビー) 右肩関節脱臼
鈴木誠也選手(野球) 左肩関節亜脱臼も強行出場
長谷川穂積選手(ボクシング) 左手親指脱臼骨折で手術
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