多くの人が悩む腰痛について解説しています。
腰痛とは腰の痛みの総称ですので、種類や症状が非常に多いのが特徴です。
そして原因や治るまでの期間など、腰痛の分類方法も様々です。
こちらのページでは、腰痛の分類方法でも新しい「職業性腰痛」について解説していきます。
職業性腰痛は多くの方が悩む職場で起こる腰痛です。
労災を申請したいような腰痛でも、労災申請が出来る腰痛と出来ない腰痛があります。
厚生労働省の腰痛対策でも「職業性腰痛」は明記されている項目ですので、今後労災認定など新たな対策が行われる可能性も考えられます。
ただ腰痛患者数が非常に多いですので、全ての職業性腰痛への補償は現実的ではありません。
その為、自分で職業性腰痛から身を守る対策が必要になると思います。
職業性腰痛とは?職業性腰痛の定義
職業性腰痛とは、職業性の疾患の1つです。
職業性疾患とは、長時間労働や局所に負担がかかる業務によって起こる疾患の総称です。
この職業性疾患で腰痛が起こることを、職業性腰痛と言います。
職業性腰痛の定義とは、「仕事中に起こる腰痛」と言えると思います。
職業性腰痛は元々重たいものを持つ仕事で起こるものでしたが、最近ではデスクワーク時間の増加によって座り過ぎによる職業性腰痛も増えています。
職業性腰痛は罹患した患者にとっても当然不利益ですが、会社にとっても腰痛で社員が休んだり仕事のパフォーマンスが低下すれば不利益を被ることになります。
その為、この職業性腰痛は今後日本が抱える大きな問題になると言えます。
職業性腰痛は様々な職種で発生することを厚生労働省も発表しています。
職業性腰痛の発生状況
職場における腰痛は、「4日以上の休業を要する職業性疾病」のうち、約6割を占める労働災害です。腰痛の発生が多い業種の全業種に占める割合を見ると、商業(小売業)で12.1%、運輸交通業(道路旅客・貨物運送業)で12.9%、保健衛生業(社会福祉施設、医療保健業)で26.6%となっています(2011年「労働者死傷病報告」より)。
厚生労働省ホームページより
職場のあんぜんサイト:腰痛予防[安全衛生キーワード]「腰痛」とは、疾患名(病気の名前)ではなく、腰部を主とする痛みやはり等の違和感、不快感といった症状の総称で、労働者に発生する腰部の痺痛等は「職業性腰痛」若しくは単に「腰痛」と呼称されています。
職業性腰痛の原因
職業性腰痛の原因は、腰痛の原因によって様々です。
腰痛の原因は色々なことが考えられますが、腰痛全体の85%は原因不明の腰痛と言われています。
そういったこともあり、職業性腰痛の原因を正確に特定するのは難しいと言えます。
重いものを持った際のぎっくり腰など、原因がはっきりしている腰痛は分かりやすいと思います。
ただ多くの職業性腰痛の原因ははっきりしないと思います。
そのはっきりしない職業性腰痛の原因で特に多いと考えられるのが、長時間のデスクワークです。
ずっと座っているので身体は楽そうですが、実は長時間のデスクワークには様々な身体への悪影響が報告されています。
中には、長時間のデスクワークで寿命が縮むとの報告もあり注意が必要です。
この長時間のデスクワークは、どこの会社でもどの職種でも起こり得ると思います。
一日の半分以上を座って過ごす人も珍しくないですので、この座り過ぎが原因の職業性腰痛というケースは多いと思います。
長時間座っていると、お尻の筋肉は圧迫されます。
そして、骨盤周りや肋周りの筋肉には押しつぶさせるような力が加わり続けます。
さらに、身体を支える上で重要な股関節周りや体幹周りの筋力は低下します。
このような影響が、腰痛の原因になると考えられます。
つまり、長時間のデスクワークが職業性腰痛の原因と言えると思います。
職業性腰痛の症状
職業性腰痛の症状としては、その腰痛の症状次第で変わります。
腰椎椎間板ヘルニアのような症状であれば、足の痺れなどの症状を伴う場合があります。
お尻の筋肉が圧迫される梨状筋症候群でも、同じように痺れなどの症状が出ます。
重たいものを持って痛めれば、ぎっくり腰のような強い痛みを伴う症状が起こります。
特に最近多い長時間のデスクワークによる腰痛であれば、慢性腰痛症の可能性が高いです。
慢性腰痛症の症状であれば、「重い」「だるい」「違和感」「不快感」のような症状が多いです。
痛みが強い訳ではないものの、このような症状が長期間続く場合は慢性腰痛症の症状と言えます。
多くの職業性腰痛の症状は、このような慢性腰痛症の症状が出ると思います。
職業性腰痛は労災認定できる?
職業性腰痛とは、仕事中に起こる腰痛ですので当然労災が出来るはずです。
ただ、現状労災認定出来るのは「災害性腰痛」と呼ばれる職業性腰痛のみです。
職業性腰痛には大きく「災害性腰痛」と「非災害性腰痛」があります。
この災害性腰痛であれば労災認定が出来ますが、先ほどの長時間のデスクワークで起こる腰痛は「非災害性腰痛」に分類される可能性が高いです。
職業性腰痛の種類「災害性腰痛」と「非災害性腰痛」の違い
労災を申請する上で重要なのが、「災害性腰痛」と「非災害性腰痛」の違いです。
「災害性腰痛」とは、仕事中に起こった突発的な原因で起こる腰痛です。
例えば、物を2人で搬送中にもう1人が転倒したことによって腰に過度な負担がかかって腰痛になった場合などは「災害性腰痛」になります。
つまり、突発的な「事故」のような怪我で腰痛となった場合は災害性腰痛になります。
一方の「非災害性腰痛」とは、この災害性腰痛ではない腰痛全般のことを言います。
つまり、長時間のデスクワークで腰に徐々に負担がかかっていき腰痛になった場合は非災害性腰痛に分類されます。
また、重たいものを持った際に腰痛になっても、それがいつも通りの業務の繰り返しで起これば非災害性腰痛扱いになります。
つまり、突発的なトラブルで起こる腰痛は災害性腰痛で、いつも通りの業務で腰痛になる場合は非災害性腰痛となります。
そう考えれば、ほとんどの職業性腰痛は非災害性腰痛になります。
ただ現在圧倒的に多いのは、非災害性腰痛です。
つまり、ほとんどの職業性腰痛では労災認定が下りないと言えます。
腰痛患者は全国に2,800万人いると言われますので、そのほとんどが仕事中に腰に負担がかかっているはずです。
つまり、職業性腰痛の大半を占める非災害性腰痛を全て労災認定していたらとんでもないことになると言えます。
それでも、過酷な労働で腰痛になったのに何の補償もされないのは腰痛患者にとって納得がいかないと言えます。
そもそもなぜこんなに職業性腰痛が増えたかと言えば、業務の細分化で同じ姿勢や同じ動きを繰り返す職業が増えたからです。
そして、デスクワーク時間の増加でさらにそれが深刻になりました。
もはや腰痛は国民病で多くの仕事の職業病ですので、職業性腰痛は深刻な問題です。
ただ、国や行政が補償できるものでもないのは事実ですので、残念ながら自分で職業性腰痛から身を守るのが現状で最良な選択肢と言えます。
自分で職業性腰痛の対策をする方法
職業性腰痛の大半は非災害性腰痛で、多くは長時間のデスクワークで起こると言えます。
長時間のデスクワークはどうやっても身体に悪いですので、辞めるに越したことはないです。
職業性腰痛対策に最適な方法は、仕事を辞めることです。
ただ現実的にそれは無理で、そもそも仕事を変えても長時間のデスクワークを避ける仕事は少ないです。
では、どのように自分で職業性腰痛から身を守るかというと自分で長時間のデスクワークで起こる影響を防ぐことです。
長時間のデスクワークでは、主に股関節周りや体幹の筋力が低下し、骨盤周りや肋骨周りの筋肉が固くなります。
実際には、数時間座っているだけでこのような影響は出ますし1時間でも十分影響は出ると思います。
つまり、なるべく長い時間座らないようにしましょうと言っても8時間以上の仕事の大半を座って過ごせばどうにもなりません。
その為、このような筋力低下や筋肉の柔軟性低下を起こさないようにするのは難しいです。
ただ、それが起こった後に元に戻すことは出来ます。
固まった筋肉をストレッチして柔軟性を取り戻し、弱った筋肉をトレーニングして筋力を戻す。
これが、現実的に職業性腰痛から身を守る対策と言えます。
毎日何時間もトレーニングをする必要はないですが、簡単なストレッチやトレーニングを毎日することで職業性腰痛の予防や対策は可能です。
ただ、必要なストレッチやトレーニングは人によって異なります。
それは、腰痛の種類や症状が多いのでその腰痛にあったストレッチやトレーニングも異なるからです。
筋力不足や柔軟性不足と言っても、どの筋肉に問題があるかでやることは異なるので、動画などで紹介されたストレッチやトレーニング方法が逆効果になる可能性も考えられます。
職業性腰痛の改善には、パーソナルトレーナーや理学療法士など身体の専門家への依頼がおすすめです。
もはや職業性腰痛を避ける職業がほとんどない以上、職業性腰痛対策に投資が必要な時代だと思います。
私もパーソナルトレーナーとして活動していますが、この記事を1時間以上かけて執筆していますので、その間筋力低下や柔軟性低下は起こっています。
放っておけば職業性腰痛になると思いますが、ストレッチやトレーニングでメンテナンスをして対策しているので腰痛にはなっていません。
試しに3日程ストレッチやトレーニングをさぼってみましたが、身体の調子が悪くなったので辞めました。
そして作業効率が圧倒的に下がったのも特徴です。
肋骨周りの筋肉の柔軟性が低下すれば呼吸も浅くなり、ストレス増加や集中力低下などの作業効率低下が考えられます。
そうすると、より長時間のデスクワークとなりより職業性腰痛を促す悪循環に陥ります。
忙しくて職業性腰痛の対策が出来ない人ほど、職業性腰痛の対策をした方がいい典型例だと思います。
職業性腰痛に思い当たる点がある方は、ぜひ早めの職業性腰痛対策を始めてみてください!
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