野球やテニス・ゴルフなどの回旋動作の多いスポーツで起こりやすい脇腹肉離れをご紹介します。
脇腹肉離れとは、正確にはわき腹にある「腹斜筋(ふくしゃきん)」という筋肉の肉離れです。
太もも裏の筋肉であるハムストリングス肉離れや、ふくらはぎの筋肉である腓腹筋肉離れに比べると少ない怪我ですが、野球やテニス・ゴルフなどの回旋動作の多いスポーツではよく起こる怪我です。
毎年プロ野球選手が何人もこの「脇腹肉離れ」で登録抹消となります。
テニスの錦織圭選手もわき腹の怪我で大会を棄権することがありました。
そんな脇腹肉離れの怪我について解説していきます。
脇腹肉離れ(腹斜筋肉離れ)とは?
脇腹肉離れとは、わき腹にある筋肉の腹斜筋という筋肉が肉離れを起こす怪我です。
太もも裏肉離れ(ハムストリングス肉離れ)や、ふくらはぎ肉離れ(腓腹筋肉離れ)に比べると発生頻度はそこまで多くはありません。
その割にニュースではよく見る怪我ですが、これは野球やテニス・ゴルフなどの回旋動作の多いスポーツで多いことが原因です。
肉離れとは、基本的に急激に引き伸ばされるようにして筋肉に力が入った時に起こります。
通常は急激に引き伸ばされて力が入っても肉離れは起きませんが、元々筋肉の柔軟性が低かったり、疲労が蓄積していたり、過度な力がかかり続けたりすると肉離れが起こります。
ハムストリングス肉離れは急激にダッシュをした時などに多く、ふくらはぎの肉離れはジャンプなどの際に起こりやすい怪我です。
脇腹肉離れは、急激に強く身体を捻った際に起こります。
日常生活ではくしゃみなどで脇腹を肉離れすることがありますが、基本的にはスポーツ中に身体を捻った際に起こりやすい怪我です。
野球のバッティングやピッチング、テニスのストローク、ゴルフのスイングなどの際に脇腹肉離れは起こります。
脇腹肉離れで損傷している筋肉
脇腹肉離れで損傷している筋肉は、複数あります。
複数の筋肉を同時に損傷していることもあれば、単独で1つの筋肉を損傷している場合もあります。
「わき腹の筋肉」という名前の筋肉はありませんので、実際の筋肉の名称はこちらになります。
・外腹斜筋
・内腹斜筋
・肋間筋
・腰方形筋
腰方形筋の損傷は少ないですが、外腹斜筋・内腹斜筋・肋間筋の損傷は多いです。
脇腹肉離れは「腹斜筋肉離れ」と言われることが多いですが、正確には腹斜筋という名前の筋肉はありません。
腹斜筋は外腹斜筋・内腹斜筋の2つを合わせた総称になります。
どこの筋肉を損傷したかによって、症状や全治も変わっていきます。
脇腹肉離れの原因
脇腹肉離れの原因は、大きく4つに分けられます。
・わき腹の筋肉(腹斜筋)の柔軟性低下
・わき腹の筋肉(腹斜筋)の筋力低下
・わき腹の筋肉(腹斜筋)への過度なストレスがかかる回旋動作
・わき腹の筋肉(腹斜筋)への度重なるストレス
この4つの原因が複数重なった時に、腹斜筋肉離れの怪我は起こりやすいと言えます。
まずは肉離れ全般に言えることですが、筋力や柔軟性不足が肉離れの大きな原因になります。
脇腹肉離れは、わき腹の筋肉が急激に引き伸ばされた時に起こります。
その引き伸ばされる力に耐えるだけの筋力がまず必要になります。
そして、十分引き伸びることが出来る筋肉の柔軟性が必要になります。
さらに、わき腹の筋肉に過度な負担がかかっていると脇腹の肉離れは起こりやすいです。
回旋動作はわき腹の筋肉だけで起こっている動作ではなく、股関節の動きなどと合わせて起こります。
この股関節の動きが上手く出なかったり、筋力が弱かったり、股関節に怪我を抱えている場合はわき腹の筋肉に過度な負担がかかります。
実際に、テニスの錦織圭選手は内ももの怪我の後にわき腹を怪我しています。
これは、内ももの怪我で股関節が上手く動かず、その結果わき腹の筋肉に過度な負担がかかった結果と推測できます。
また、特別負担がかかるような動きではなくても過度に回旋動作が続けば当然脇腹肉離れのリスクも上がります。
単純に過度な運動・疲労などが原因で脇腹肉離れのリスクが上がります。
これらの原因となるものが複数重なって、脇腹の肉離れが起こります。
例えば、元々わき腹の筋力がそこまでない状態で股関節の動きも悪い野球選手が、疲労困憊の中素振りをひたすら繰り返した結果、脇腹を肉離れするといった具合です。
脇腹肉離れの症状
脇腹肉離れの症状は、まずは脇腹に痛みが出ます。
鈍痛のような鈍い痛みが出たり、動かした時にだけ痛みが出たり、突然痛くなったり痛みが無くなったりと、痛みの感じ方は個人差があるようです。
肉離れの症状については、日本整形外科学会ではこのように説明されています。
典型的なものは、スポーツをしているとき、ふくらはぎの内側の中央上部(上中1/3部)に痛みが生じます。大腿部に生じることもあります。
体重をかけると痛むために通常の歩行が出来なくなります。
日本整形外科学会のホームページの内容はふくらはぎの肉離れの話ですが、症状としては脇腹でもふくらはぎでも同じです。
ふくらはぎは体重をかければ痛みが出ますが、脇腹は捻る・咳をするなどの動作で痛みが出ます。
その筋肉を使う時だけ痛みが出るということです。
痛み以外の症状としては、腫れや熱感(熱を持つ)などの症状があります。
これは肉離れ全般の症状と同じですが、動かさないとそこまで痛みは出ません。
安静にしている状態での症状はそこまで酷くはありませんが、動くと痛い、動いた後に熱を持つなどの症状があります。
わき腹が痛いということは日常ではあまりないと思いますので、症状の訴え方としては上手く説明できないことも多いです。
腰が痛いと言った症状を訴えることもありますので、脇腹肉離れを負った本人があまりうまく説明できないもどかしさを感じるかもしれません。
脇腹肉離れの痛み
脇腹の痛みというとあまり普段感じることが無いと思いますので、どこが痛いのか表現が難しい場合が多いようです。
腹痛のような感じやあばらが痛いなどの症状で、最初は内臓が悪いのでは?と感じる人もいるようです。
スポーツ中に起こる場合は、身体を強くひねった瞬間に痛みが走りますので比較的わかりやすいと思います。
ゴルフでのスイング時、野球のバッティングでのスイング時、投球時、テニスでのスイング時などでわき腹に痛みが出ます。
ひどい場合では、呼吸でも痛みが出る可能性もあります。
これは脇腹肉離れの重症度も関係しますが、痛めた部位も関係します。
痛みの種類としては、動かしたときにビキっと痛みが走ることが多いです。
このような痛みを感じた場合は、運動を中止し医師の診断を受けましょう。
脇腹肉離れの全治期間の目安
脇腹肉離れの全治の目安期間は、肉離れの程度によって異なります。
ただ、脇腹の筋肉は肋骨についており肋骨は呼吸をするたびに動きます。
つまり、起きていても寝ていても脇腹の筋肉は多少なりとも動きますので完全に安静にすることは不可能です。
その為、比較的治りにくい部位の怪我と言えます。
脇腹肉離れの全治目安は1~2ヶ月程度であることが多いと思います。
肉離れの損傷の度合いが小さければ全治までの期間は短く、肉離れの損傷が大きければ全治までの期間は長くなります。
また肉離れは再発が多いのも特徴です。
その為、1か月ほどで痛みが引いてまた急に動かすと再び肉離れとなる危険性が高いですので、治療やリハビリが重要になります。
脇腹肉離れを早く治すコツ
脇腹肉離れは治りにくい怪我、再発が多い怪我です。
そう言った意味では厄介な怪我と言えます。
その脇腹肉離れからの復帰を早める方法としては、治療をしっかりすることとリハビリをしっかりすることです。
当たり前と言えば当たり前のことですが、結局は裏技的な方法で早く復帰を目指そうとするとどうしても無理があります。
怪我をした時はどうしても復帰を焦ってしまう傾向があります。
しかし、それが怪我の再発に繋がるというケースも少なくありません。
次に紹介する脇腹肉離れの治療方法やリハビリ方法を実践することが、遠回りのようで早期復帰への近道です。
むしろ脇腹肉離れの場合は、「早く治すこと」よりも「再発を防止すること」を念頭に置くべきだと思います。
これは脇腹肉離れに限らずどの肉離れでも同じですが、治りかけは痛みも少なく動けそうな感覚になりますが、実際にはかなり脆い状態です。
脇腹肉離れの治療方法
脇腹肉離れの治療方法に関しては、まずは安静にします。
先程もありましたが、わき腹の筋肉は肋骨に付いていて肋骨は呼吸をするたびに動きます。
その為、完全に安静にするのは難しいですが身体を捻るなどの動作は極力避けます。
患部であるわき腹の治癒を促す為に電気治療なども行われますが、基本的には安静にします。
脇腹肉離れに限らず肉離れ全般に言えることですが、初期症状としての痛みは強いもののある程度炎症が落ち着くと痛みは減ります。
「動かすと痛いけど動かさないと痛くない」という状態は、まだ肉離れが治っていません。
痛みが減る=完治ではありません。
これが肉離れの再発が多い原因の1つでもありますが、痛みが減ったらすぐに運動に復帰するのは危険です。
脇腹肉離れにテーピングは有効?
脇腹肉離れに対してテーピングが用いられます。
こちらも肉離れ全般に言えることですが、テーピングをすれば痛みは減ってある程度動かしても大丈夫になります。
しかし、テーピングは治療方法というよりは安静にする為の補助です。
テーピングで動きを制限することで、痛みが出る動作が出来なくなる、もしくはしにくくなる効果があります。
その結果、痛みが減りますが治ったわけではありません。
脇腹肉離れは呼吸によって完全に安静には出来ないという特性上、テーピングが有効ではあります。
ただ、テーピングは治すものではなくあくまで補助という理解で使うべきです。
脇腹肉離れに湿布は有効?
脇腹肉離れに対して、湿布を貼ることは有効な方法の1つです。
肉離れの初期に関しては炎症が強く起こっていますので、湿布によって炎症を抑える効果が期待できます。
ただ、鎮痛剤のような効果でもありますしそこまで強い抗炎症作用がある訳でもありません。
初期にはアイシングなどでしっかりと炎症を抑えることが有効と言われています。
しかし、寝ている間にはアイシングが出来ません。
寝ている間には湿布を貼る方がおすすめです。
しかし、湿布を貼るだけで治る訳ではありませんので、次に紹介するリハビリもしっかり行う必要があります。
脇腹肉離れのリハビリ方法
脇腹肉離れで問題になるのがリハビリです。
脇腹肉離れの原因は、わき腹の筋肉の筋力不足や柔軟性不足、そしてわき腹に過度な負担がかかる回旋動作などです。
痛みが引いたら少しずつわき腹の筋肉である腹斜筋のストレッチやトレーニングを始めます。
徐々に強度を上げて、脇腹肉離れが起こる「引き伸ばされながら力を入れる」動きでもリハビリを行います。
そして、わき腹に過度な負担がかからないように股関節や背骨の動きの改善も行います。
股関節の内旋動作という身体を捻る動作がしっかり行えるように、股関節のトレーニングも行います。
特に座っていることが多い現代では、股関節と胸椎(背骨の胸の部分)の柔軟性は低下しやすい傾向があります。
この2カ所の柔軟性の低下は、脇腹へのストレスが増えますので脇腹肉離れが起こりやすい状態と言えます。
つまり、現代人は脇腹肉離れを起こしやすい身体になっている人が多いと言えます。
その為、脇腹の炎症が治まったら完治ではなく再発させないようにこの股関節と胸椎の柔軟性をしっかりと高めるリハビリトレーニングを行う必要があります。
脇腹肉離れのリハビリは、パーソナルトレーナーやアスレティックトレーナー、理学療法士などの専門家の元で行うことがお勧めです。
我流のトレーニングで脇腹肉離れの怪我を再発させてしまっては元も子もありませんので、専門家の指導のもとでしっかりリハビリを行いましょう!
脇腹を肉離れしたスポーツ選手の例
脇腹肉離れは、野球やテニス・ゴルフなどに多い怪我です。
こちらでは、脇腹の肉離れをしたスポーツ選手を一部ご紹介します。
腹斜筋肉離れ、腹斜筋筋損傷、脇腹肉離れ、腹斜筋筋挫傷など発表される表現が異なる場合も多いですが、基本的には同じ脇腹の筋肉の怪我を指していると思われます。
脇腹肉離れをした野球選手
・村中恭平投手(2011年 右脇腹肉離れで登録抹消)
・筒香嘉智選手(2016年 右脇腹肉離れで登録抹消)
・立岡宗一郎選手(2016年 左脇腹肉離れで登録抹消)
・岸孝之投手(2015年 左脇腹肉離れで登録抹消)
・荻野貴司選手(2016年 左脇腹肉離れで登録抹消)
・雄平選手(2016年 左脇腹肉離れで登録抹消)
・菊池雄星投手(2016年 右脇腹肉離れで登録抹消)
・坂本勇人選手(2018年 左脇腹肉離れで登録抹消)
・渡辺諒内野手(2019年 右内腹斜筋肉離れ)
・山岡泰輔投手(2020年 左内腹斜筋筋損傷)
・坂本勇人選手(2022年 左腹斜筋筋挫傷)
脇腹肉離れをしたテニス選手
・錦織圭選手(左脇腹の怪我でゲリーウェバーオープン負傷棄権)
このように、脇腹肉離れは回旋動作という身体を捻る動作が多いスポーツに多い怪我です。
テニス、野球、ゴルフなどは脇腹肉離れの危険性が高いスポーツと言えます。
特にゴルフや野球は同じ方向への回旋動作が多いですので、疲労が強かったり柔軟性が低下していると脇腹肉離れの危険性が高いので注意が必要です。
コメント
右わき腹と左わき腹とあるようで提示例では左が多いようです。下名はテニスで右を痛めました。(右利き)右利きなら右の方にストレスがかかるように思うのですが・・・。
あ、先般はバックハンドショットで左わき腹を痛めたこともあります。フォアハンドストロークとサービスは右を痛めるではないかと思います。