スポーツ中に多い膝の怪我である「内側半月板損傷」について解説していきます。
半月板損傷と言われることが多いですが、正確には半月板は内側半月板と外側半月板の2つがあります。
このうちの、内側半月板を損傷する怪我が「内側半月板損傷」です。
内側半月板損傷は単独で起こる場合もありますが、膝内側側副靭帯損傷や前十字靭帯損傷などの怪我と同時に起こることがあります。
内側半月板損傷だけでも大きな怪我ですが、内側側副靭帯損傷なども同時に起こると全治が半年を超えるような怪我になる可能性があります。
そんな内側半月板損傷を解説していきます。
内側半月板損傷とは?
内側半月板損傷とは、膝の内側にある「内側半月板」が損傷する怪我です。
半月板とは、膝のクッション材の役割を果たす組織で左右の膝にそれぞれ2つずつあります。
その2つの半月板のうち内側にある半月板が、内側半月板です。
内側半月板の特徴は、外側半月板に比べて大きいことです。
「内側半月板」「外側半月板」という名前だけでだと、半月板は左右同じような形をしていると思われがちです。
実際は全く別のものです。
内側半月板は大きく、形もアルファベットの「C型」をしています。
外側半月板は、内側半月板に比べて小さくアルファベットの「O型」です。
これは、膝の内側の方が大きな負担がかかる為と考えられています。
その膝の内側にかかる負担が、半月板が耐えられる限界を超えると、内側半月板損傷の怪我になります。
一般的には、「半月板損傷」と表現される場合も内側半月板損傷か外側半月板損傷のどちらかです。
内側半月板損傷の方が外側半月板損傷の5倍起こりやすいと言われていますので、「半月板損傷」と表現する場合は大抵内側半月板損傷のことであると言えます。
内側半月板損傷は大きく2つに分けられます。
1回の強い衝撃で起こるものと、繰り返しの膝への負担で起こるものです。
ただ多くは、どちらの要素も含んでいると思います。
元々膝の内側に負担がかかり続けた上に、最後に強く膝の内側に強い負担がかかって内側半月板損傷が起こります。
内側半月板損傷の症状
内側半月板損傷の症状としては、痛めてすぐは強い痛みが出ます。
特に、膝の曲げ伸ばしなど動かした時に強い痛みが出ます。
また、膝の曲げ伸ばしで違和感や引っ掛かり感が常に出ます。
重症の場合は、膝を完全に伸ばせず途中で動きが止まってしまうロッキング症状が出ます。
これは、損傷した半月板が引っ掛かっているような状態です。
慢性化すると、水が溜まるなどの症状も出てきます。
酷い場合は自力で歩けないほどの痛みや可動域制限も起こります。
内側半月板損傷の原因
内側半月板損傷の原因は、膝の内側への強い負担で起こります。
具体的には、膝が捻られた時に半月板損傷が起こります。
内側半月板損傷が起こる原因は、「ニーイントウアウト(knee in toe out)」と呼ばれる膝が内に入る体勢で起こります。
スポーツ中の動作では、ジャンプでの着地動作・走っている時の切り返しやストップ動作・相手選手との接触など不安定な体勢での転倒などでこのニーイントウアウトの体勢になることで内側半月板損傷が起こります。
このようなジャンプやダッシュ、切り返し、転倒などが多いスポーツで内側半月板損傷は起こりやすいと言えます。
ただ走るだけでなく、相手との駆け引きや急ストップや急発進が多い走りが含まれるスポーツです。
その為、サッカー・ラグビー・バスケットボール・ラクロス・バレーボールなどのスポーツが内側半月板損傷の多いスポーツと言えます。
この内側半月板損傷が起こる背景には、小さい頃からの過度の膝への負担や股関節の筋力低下、足首の怪我、逆足の筋力不足や怪我など様々なことが原因として考えられます。
内側半月板損傷のような大きな怪我の前には、小さな怪我が付き物です。
足首の怪我では、足首捻挫の怪我が多いです。
足首捻挫の怪我は軽症であれば1週間くらいで治りますが、このような軽症の怪我で無理にスポーツを行うと膝に負担がかかり、内側半月板損傷の原因に繋がります。
また、逆足の膝の怪我も膝に負担をかける原因になります。
人間は痛みがあると必ず無意識にかばいますので、両足のジャンプやストップの際に過度な負担が怪我をしていなかった方の足にかかります。
その為、左膝の内側半月板損傷が右膝の内側半月板損傷の原因となることもあります。
内側半月板損傷の治療方法
内側半月板損傷の治療方法は、大きく2つに分けられます。
1つは保存療法という、手術をしない治療方法です。
保存療法では、まずは安静にして痛みが引いてからリハビリを開始します。
内側半月板の損傷程度が少なければ、基本的には保存療法が選択されます。
2つ目は手術療法です。
昔は内側半月板損傷では簡単に手術療法が選択されて、内側半月板の摘出手術が頻繁に行われていました。
ただ、半月板は膝のクッション材の役割ですので半月板を摘出してしまえば膝への負担は大きくなります。
その為、半月板の摘出手術後に他の膝の怪我に繋がる報告が多く、極力半月板は摘出しない方針が最近では多いです。
手術をするにしても、縫合手術や部分摘出など可能な限り内側半月板を保存するようにします。
また、以前は半月板には血が通っていないので治癒しない組織と言われていましたが、外周部には血液の供給があることが分かっています。
つまり、半月板の外周部の損傷であれば自然治癒が見込めますので、内側半月板損傷といっても半月板のどこを損傷しているかが、治療方針の決定には重要です。
順天堂大学のホームページでは、極力保存療法(運動療法)で改善を試みて、それでも難しい場合は手術療法を選択するという流れが解説されています。
私達はこれらの方々にはまずは痛くなくできる運動療法を行ってもらい、大部分の方々で痛みのない膝を取り戻すことができています。しかしその療法が効を奏さない場合には最短の入院期間(2~3日間)で済む内視鏡手術を行っています。
内側半月板損傷のリハビリ方法
内側半月板損傷のリハビリには2通りあります。
1つは、固定していて落ちた筋力や柔軟性の再獲得です。
保存療法でも、手術療法でもまずは安静期間があります。
人間の機能として、使わない機能は必ず低下します。
動かさない筋力は低下し、動かさない関節は硬くなります。
内側半月板損傷の手術後に安静にしていると、右足と左足の太さがかなり変わります。
この失った機能を回復させるのが、内側半月板損傷のリハビリの第一段階です。
まずは膝の曲げ伸ばしのような簡単な動作から始め、しっかりと怪我をした足に体重を賭けられるようにリハビリしていきます。
これはスポーツ選手でも同じですので、元のスピードで走れるようなリハビリの前に、階段を自力で上り下りできるようなリハビリをしていきます。
徐々に歩く、走ると強度を上げていき、実際に怪我をしやすい動作のジャンプやストップ動作へと進んでいきます。
スポーツに復帰する場合、結局この怪我をしやすい動作は避けられませんので、再発しやすい動作をしっかり出来るようにリハビリしていきます。
そして、最も重要なのが内側半月板損傷を再発しないように膝の内側に負担がかかりにくくするリハビリです。
先ほどの内側半月板損傷の治療で失った機能を回復するリハビリでは、元に戻すだけです。
内側半月板損傷に至った原因には、膝の内側に過度な負担がかかる原因が必ずあります。
膝の内側に過度な負担がかかる原因には、次のようなものが考えられます。
・股関節の柔軟性低下
・足首の柔軟性低下
・股関節の筋力不足
・逆足の股関節の筋力不足
・体幹の筋力不足 etc.
このように多岐に渡る何らかの原因を改善することが、内側半月板損傷の再発を防ぐリハビリとなります。
内側半月板の一部が損傷していれば、以前よりも内側半月板損傷のリスクは上がっています。
その再発を防ぐには、これらの元々持っていた内側半月板損傷のリスクを排除することが重要です。
ただこれは原因が多く、柔軟性や筋力などの身体の状態を詳しくチェックする必要があります。
その為、内側半月板損傷のリハビリにはパーソナルトレーナーや理学療法士などの専門家にこれらのチェックを依頼することがおすすめです。
パーソナルトレーニングでは、慢性化した怪我や再発を繰り返す怪我のリハビリを行えます。
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内側半月板損傷の怪我をしたスポーツ選手一覧
内側半月板損傷はサッカーやバスケットボール、ラグビーなど様々なスポーツで起こりやすいです。
接触プレーや転倒があれば、その他のスポーツでも起こり得ますので非常に多い怪我と言えます。
ここでは、内側半月板損傷と報道されたスポーツ選手をご紹介します。
本田圭佑選手(サッカー) 右膝内側半月板損傷で手術 2011年
石川直宏選手(サッカー) 左膝前十字靭帯損傷のリハビリ中に左膝内側半月板損傷 2016年
奥原希望選手(バドミントン) 両膝の半月板損傷から復帰しリオ五輪で銅メダル獲得
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