「ストレッチ」という言葉は広く知られるようになりましたが、ストレッチにはいくつか種類があることはご存知でしょうか?
「ストレッチは反動をつけてはいけない」と言われることもありますが、それはストレッチの種類によります。
このストレッチの種類を理解しないと、逆効果のウォーミングアップになったり、効果的に柔軟性を高めることができなかったりします。
逆を言えば、ストレッチの種類を理解することで効果的なストレッチができるようになります。
ストレッチの種類一覧
ストレッチには種類が色々とあります。
一般的に言われるストレッチの種類一覧が次のようになります。
・スタティックストレッチ
・バリスティックストレッチ
・ダイナミックストレッチ
・PNFストレッチ
また、大まかに分類して次の2つの種類に分ける場合もあります。
・静的ストレッチ
・動的ストレッチ
これらのストレッチはどれがいいストレッチでどれが悪いストレッチという訳ではありません。
全て必要なストレッチですので、目的によって使い分けるのが正しいストレッチ方法と言えます。
その為、「スタティックストレッチが身体にいい」などの言い方は認識が間違っています。
人によっていいストレッチは異なります。
人によるというよりも、目的や身体の状態によって異なるという方が的確かもしれません。
では、1つずつストレッチを解説していきます。
スタティックストレッチとは?
スタティックストレッチとは、ごく一般的なストレッチです。
ストレッチと聞くと、このスタティックストレッチを思い浮かべる人が多いと思います。
スタティックストレッチは反動を付けないでゆっくり行うストレッチです。
スタティックストレッチは、30秒~1分ほど同じ姿勢で止まってじっくり筋肉を伸ばすストレッチです。
スタティックストレッチの特徴
スタティックストレッチの特徴は、まずは狙った筋肉をしっかりと伸ばすことが出来ます。
また、ストレッチの難易度も低く、運動初心者でも手軽にできます。
スタティックストレッチのメリットとしては、筋肉を安全にストレッチができる点です。
また、寝る前やクールダウンなどのリラックスさせたい時のストレッチとしても有効です。
反対にスタティックストレッチのデメリットとしては、ウォーミングアップには向きません。
スタティックストレッチをすると筋肉が弛緩して力が入りにくくなり、逆にスポーツパフォーマンスが落ちるとの報告もあります。
スタティックストレッチは反動を付けずに行うストレッチですが、「ストレッチは反動を付けてはいけない」という理解だと、ウォーミングアップで逆効果のストレッチをする可能性があるので要注意です。
ストレッチは反動を付けたらダメ?ストレッチの正しいやり方解説
バリスティックストレッチとは?
バリスティックストレッチとは、スタティックストレッチの反対で反動を付けて行うストレッチです。
そもそもスポーツなどの運動は反動を付けて行います。
スポーツに限らず日常生活でも反動を使っています。
「バリスティックストレッチは危険」という誤った認識がありますが、それを言ったらジョギングなんて恐ろしく危険な運動になります。
バリスティックストレッチは正しく行うことで、効果的に柔軟性を高めることができるストレッチです。
バリスティックストレッチの特徴
バリスティックストレッチの特徴は、反動をつけることでより強く筋肉をストレッチ出来ることです。
これにより、柔軟性を高める効果が上がります。
また、実際の日常動作やスポーツ動作に近い動きになりますので、普段の動作も変わります。
スポーツ選手やスポーツ愛好家は取り入れるべきストレッチと言えます。
ただ、注意点もあります。
それは、スタティックストレッチと比べると筋肉を痛める危険性が高い点です。
筋肉は伸び縮みする組織ですが、過度の伸び縮みや急激な伸び縮みは筋肉を痛めます。
その為、バリスティックストレッチは先に軽いジョギングなどをして筋肉の温度を上げたり、先にスタティックストレッチである程度柔軟性を高めてから行うなどのバリスティックストレッチの為の下準備が必要になります。
ダイナミックストレッチとは?
ダイナミックストレッチとは、その名の通りに身体をダイナミックに動かすストレッチです。
スタティックストレッチやバリスティックストレッチはある程度ピンポイントの筋肉を狙っているのに対し、ダイナミックストレッチは複数の筋肉を同時に動かします。
足を大きく振ったり、腕を大きく回したりすることで、身体全体を使ったストレッチになります。
ダイナミックストレッチの特徴
ダイナミックストレッチの特徴としては、複数の筋肉を同時にストレッチ出来ることです。
限られた時間で運動をするには、細かく筋肉1つずつをストレッチしている時間はありません。
その為、ダイナミックストレッチでまとめて動かせるのは効率的です。
本来の身体の動きは特定の筋肉だけで動くわけではなく、複数の筋肉が一緒に働いて動きます。
人間の身体には600個ほどの筋肉があり、足を一歩前に踏み出すだけで100個以上の筋肉が働くとも言われています。
その為、ダイナミックストレッチはより日常動作やスポーツ動作に近いストレッチと言えます。
ダイナミックストレッチはスポーツのウォーミングアップに効果的なストレッチです。
短時間で効果的なストレッチが見込めますが、その反面難易度の高いストレッチです。
特定の筋肉が硬すぎれば、ダイナミックストレッチをスムーズに行うことは難しく、上手く出来なければダイナミクスストレッチの効果は半減します。
それどころか、誤った動きを身体が覚えて怪我などの繋がる可能性もあります。
正しいダイナミックストレッチを行うためにも、スタティックストレッチやバリスティックストレッチでしっかりと柔軟性を出すことが必要です。
PNFストレッチとは?
PNFストレッチとは、別名「固有受容性神経筋促通法」と言われます。
このPNFストレッチのやり方は、徒手抵抗という形でパートナーが力を加えたものに対抗して力を入れます。
短時間で柔軟性を大きく伸ばせますが、自力で出来ないストレッチですので実際に行うには色々な障壁があります。
専門的知識のない人が見よう見まねで行うと、狙った効果を引き出せないばかりか筋肉を痛める可能性もあります。
また、PNFストレッチだけではストレッチ効果はすぐに戻りますので、他のストレッチと組み合わせて自力で最大可動域まで動かす必要があります。
ストレッチの分類の仕方
他にもストレッチの分類方法はあります。
それは、先ほどのように細かく分けずに、大まかに分類する方法です。
大まかにストレッチを2種類に分けると、動的ストレッチと静的ストレッチに分けられます。
静的ストレッチとは、止まって行うストレッチのことです。
先ほどの分類でいうとスタティックストレッチのことです。
動的ストレッチは、身体を動かしながら行うストレッチのことです。
ダイナミックストレッチのことを指して動的ストレッチという場合もありますが、バリスティックストレッチもPNFストレッチも動的ストレッチに分類できます。
ストレッチは目的に合わせて種類を使い分ける
それぞれのストレッチの特徴をご紹介しましたが、全てメリットデメリットがあります。
その為、これがいいストレッチでこれが悪いストレッチということはありません。
また、1つのストレッチだけで柔軟性をしっかり高めることも難しいです。
ダイナミックストレッチを行うには、その前にスタティックストレッチやバリスティックストレッチが必要ですし、スタティックストレッチだけで終わればウォーミングアップにはなりません。
大まかなイメージとしては、次のような順番でストレッチをすれば効果的です。
スタティックストレッチ→バリスティックストレッチ→ダイナミックストレッチ
また、寝る前やクールダウンではスタティックストレッチが有効です。
このようにストレッチには種類があり、それぞれ特徴があります。
ストレッチの特徴を知り、それぞれのストレッチをうまく組み合わせることが正しいストレッチ方法と言えます。
パーソナルトレーニングではお客様の目的や要望、身体の状態に合わせてストレッチを行います。
ストレッチの特性を見極めて最も効果的なストレッチを処方することで、効果的なストレッチとなります。
ご自身でストレッチを行う場合も、自分に合ったストレッチ方法はどれか?を考えながら取り組んでみてください!
ストレッチの効果
ストレッチの効果には様々なものがあります。
ストレッチの主な効果としては次のようなものです。
・柔軟性の向上
・疲労回復
・リラックス効果
また、ストレッチで柔軟性が向上することで副産物として次のような効果も期待できます。
・スポーツの競技力向上
・肩こりや腰痛などの身体の不調
・姿勢改善
・スタイル改善
ストレッチの効果①柔軟性の向上
ストレッチの効果としては、柔軟性の向上があります。
これはまさにイメージ通りの効果だと思います。
ストレッチで筋肉を伸ばすことで、筋肉が伸長して柔軟性が上がります。
筋肉は本来伸び縮みをする組織ですが、同じ姿勢で居続けるなどの負担がかかると上手く伸びなくなります。
その上手く伸びなくなった筋肉をストレッチすることで、元の柔軟性を取り戻すことができます。
昔から身体がかたいという人でも、赤ちゃんの頃からかたかった訳ではありません。
本来持っているはずの筋肉の柔軟性を取り戻すことが、ストレッチによって得られる効果の1つです。
ストレッチの効果②疲労回復
ストレッチの効果としては、疲労回復の効果もあると言われています。
筋肉をストレッチすることで、血流が良くなり血中の疲労物質が押し流されると言われています。
運動後にストレッチをしましょうと言われる理由が、この疲労物質の除去です。
ただ、交代浴などでも血流を促して疲労物質の除去は可能とも考えられます。
激しい運動の後には、ストレッチに限らず身体のケアをすることが疲労回復を早めて、怪我を予防することに繋がります。
ストレッチの効果③リラックス
先ほどの疲労回復と近いですが、ストレッチによってリラックス効果を得られます。
ストレッチと脳波の研究では、ストレッチをすることでアルファ波が増加し副交感神経系が働きやすくなると言われています。
リラックス状態を簡単に言うと、交感神経が働くと興奮状態で、副交感神経が働くとリラックス状態と言えます。
つまり、ストレッチによって副交感神経が働くことで、リラックスできると言えます。
寝る前にストレッチをすることで睡眠の質が上がるというのは、このリラックス効果を元に言われています。
ただ、ストレッチには種類がいくつかあります。
先ほどの疲労回復効果やリラックス効果は、スタティックストレッチ(静的ストレッチ)と呼ばれるストレッチ方法です。
反対の動的ストレッチでは、リラックス効果などは得られませんので、ストレッチの種類を理解して行うことが重要です。
ストレッチの効果④スポーツの競技力向上
ストレッチの効果として、スポーツの競技力向上があります。
これは、ストレッチによって柔軟性が上がった結果として得られる効果です。
スポーツの競技力向上となると、リラックス効果があるスタティックストレッチとは反対に、動的ストレッチが効果的です。
特に、ウォーミングアップとして行うとスポーツパフォーマンスの向上や怪我の予防に繋がります。
ストレッチの効果⑤肩こりや腰痛などの身体の不調
ストレッチの効果として、腰痛改善や肩こり改善などの身体の不調改善の効果があります。
これもストレッチで柔軟性が向上した結果、得られる効果です。
ただ、これらの身体の不調は柔軟性不足だけで起こっている訳ではありません。
柔軟性不足と同時に筋力不足や動きの癖の変化など、様々な要因が合って身体の不調として症状が出てきます。
「ストレッチをしても腰痛が良くならない」というケースは実は非常に多く、それは柔軟性不足が腰痛の原因ではないか、柔軟性不足であってもストレッチをすべき筋肉が違うかのどちらかです。
これは、先に身体の柔軟性や筋力をしっかりとチェックしてから行わないと、効果が出ません。
それどころか逆効果になる可能性もあります。
身体の状態の詳しいチェックには、パーソナルトレーニングが効果的です。
パーソナルトレーニングとは?パーソナルトレーニングの詳しい解説はこちらから
ストレッチの効果⑥姿勢改善・スタイル改善
ストレッチの効果としては、姿勢改善やスタイル改善も挙げられます。
こちらも、ストレッチによって柔軟性が向上した結果得られる効果です。
姿勢の崩れは、筋肉のバランスの崩れで起こります。
筋肉のバランスの崩れとは、簡単に言えば「硬すぎの筋肉」と「弱すぎの筋肉」によって起こります。
弱い筋肉はトレーニングで鍛え、硬い筋肉はストレッチで伸ばすことで筋肉のバランスを改善出来ます。
その為、姿勢改善やスタイル改善にはストレッチが有効と言えます。
ただ、先ほどの肩こりなどの身体の不調改善と同じく、ストレッチだけで改善することは難しいです。
ストレッチだけでなく、トレーニングも組み合わせることで効果的に姿勢改善やスタイル改善をすることができます。
ストレッチをしても姿勢が変わらなかったという場合は、肩こりなどと同じく柔軟性不足ではなく筋力不足の原因が大きいか、柔軟性を上げるべき筋肉をストレッチ出来ていなかったのかいずれかです。
ストレッチは効果がない?
ストレッチは効果が無いと言われることもあります。
ただ、先ほど挙げたような効果はストレッチで期待できるものです。
それでもストレッチで効果が出ないと言われる理由は大きく2つあります。
1つはストレッチが正しく出来ていない場合です。
ストレッチでは狙った筋肉をしっかり伸ばすことで正しい効果を得られます。
ただ、人間は硬い筋肉を伸ばさないような動きをします。
これが、代償動作と呼ばれるものです。
硬い筋肉を伸ばすのは痛いし動かしにくいので、動きやすい他の筋肉を使って動かそうとします。
そうすると、一見同じような動作でストレッチをしていても、その効果は半減どころか全くない場合もあります。
正しい方法でストレッチをするのは、我流では意外と難しいものです。
ストレッチにダイエット効果は無い?
2つ目のストレッチで効果が出ない原因は、ストレッチに過度な効果を求められる場合です。
特にストレッチによるダイエット効果を求められることがありますが、基本的にはストレッチをしたから痩せるという効果はありません。
ダイエットは食べたものの総カロリーと、消費したカロリーの差が重要です。
その他、腸内環境の改善やむくみの改善など、様々な要素で痩せるか太るかが決まります。
「ストレッチによって可動域が広がった結果、カロリー消費が増える」という考え方もありますが、個人的にはその効果は決して大きくはないと思います。
それよりも、食事の改善や有酸素運動などの方がダイエット効果は高いと思います。
特に食事は重要で、ダイエットの8割~9割は食事改善という考え方もあります。
個人的にも、それが正しいと現段階では考えています。
「ストレッチをしているのに全然痩せない」
という方は、まずは食事の改善が必要な場合が多いと思います。
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