パーソナルトレーニングにおける考え方の引き出しとして、パフォーマンスピラミッド(performance pyramid)という考え方をご紹介します。
これは、様々な団体やトレーナー・専門家が様々なパフォーマンスピラミッドを作成しており、明確に「これが正しいパフォーマンスピラミッド」というものは無いように感じます。
ただ、表現が違っていてもだいたい言わんとしていることはほぼ同じだと思います。
今回は、あくまで私が考える時に一番しっくりくるパフォーマンスピラミッドをご紹介します。
書籍などによって違う表現もあると思いますが、だいたい同じような内容だと思いますので、そこだけご了承くださいませ。
パフォーマンスピラミッドとは効果的なトレーニングの順番を示す道標
パフォーマンスピラミッドとは何か?を考える時、まずは視覚的に理解した方が早いですので、こちらの画像をご覧ください。
※EXOSのパフォーマンスピラミッドを基に改変
このパフォーマンスピラミッドの意味は大きく2つあります。
1つは、下の層から順にトレーニングを行うことでパフォーマンスが向上するという意味です。
具体的な例があった方が分かりやすいので、野球のピッチングに例えてみましょう。
一番下の層の「モビリティ・スタビリティ・ムーブメント」とは、分かりやすく言えば柔軟性や基礎的な筋力、基本的な動きです。
野球のピッチングで言えば、「片足でしっかり立つ」といったことです。
片足でしっかり立つためには、支持脚の股関節のスタビリティや遊離脚の股関節のモビリティが必要です。
右ピッチャーは左足がちゃんと上がって、右足でピタッと止まりましょうということです。
投げ終わる時は左足でしっかり止まる為のモビリティ・スタビリティ。
その途中の動作では、胸を張って投げられるように右肩関節のモビリティ、固定点・動作点の考え方で言えば左肩のスタビリティの要素もあります。
これらが無い状態で、一番上の層のスキル(競技動作)を高めようとしても出来ません。
片足で立てずにグラグラしているピッチャーが、100球投げ込んでも200球投げ込んでも速いボールも投げられませんし、コントロールも定まりません。
そして、怪我のリスクも高まります。
そうならないように、トレーニングの順番は先にモビリティ・スタビリティ・ムーブメント、その後にパフォーマンス(筋肥大・筋持久力など)、そして最後にスキル(競技動作)という順番が、一番効率的だし、パフォーマンスも高まるし、障害のリスクも軽減できる。
このような考え方が、パフォーマンスピラミッドの考え方です。
こちらがパフォーマンスピラミッドの大枠の解説ですので、各用語をもう少し細かく見ていきましょう!
モビリティ
モビリティを柔軟性と訳す場合もありますが、半分正解・半分不正解だと思います。
柔軟性=フレキシビリティと訳す方が適切だと思います。
こちらは別で詳しく解説しますが、モビリティ=「特定方向へ動かす能力」と考える方が適切だと思います。
スタビリティ
スタビリティもいわゆるプランクのように、全く動かないように固定させる剛体化のイメージが強いと思います。
こちらも、静的な安定性・動的な安定性、姿勢安定化・動的安定化・剛体化など様々な切り口でスタビリティを解釈出来ると思います。
ここでは、スタビリティ=静的・動的な安定性とします。
ムーブメント
ここで言っているムーブメントは、基本的な動作という意味で一番下の層に「ムーブメント」と入れました。
EXOSのパフォーマンスピラミッドでは、この層は「モビリティ・スタビリティ」だけでした。
私個人の考えとして、次の層で「パフォーマンス」で筋肥大や筋持久力の向上を目指すなら、一番下の層で基本的な動作は習得しておいた方がよいと考えました。
具体的には、「スクワット動作」「ヒップヒンジ動作」「片足立ち」などです。
パフォーマンス
ここで意味しているパフォーマンスは、「筋肥大」「筋持久力」「ハートレート(心肺機能」」「パワー(力×スピード)」などです。
具体的にはウェイトトレーニングやスピードトレーニング、長距離走などが個々に分類されます。
先程のピッチングに例えると、強いボールを投げるには、爆発的なパワーが必要ですので、ピッチング練習の前に、メディシンボールで強く投げたり、ダンベルフライなどで最大筋力を高めたりした方がよいと思います。
ただ、その前に股関節や肩関節、脊柱などのモビリティ・スタビリティが低下していれば、これらのトレーニングを正しく行うことが難しいので、このパフォーマンスの前段階に「モビリティ・スタビリティ・ムーブメント」があり、「スキル(競技動作)」の前にパフォーマンスがあるべきだと考えられます。
アンバランスなパフォーマンスピラミッド
先程の画像のパフォーマンスピラミッドは、理想的なパフォーマンスピラミッドと言えます。
これに対して、アンバランスなパフォーマンスピラミッドも存在します。
具体的には、中間層の「パフォーマンス過多」のパフォーマンスピラミッドです。
モビリティ・スタビリティ・ムーブメントに比べて筋肥大やパワーに偏り過ぎている状態です。
最近、野球選手で身体を大きくするのが流行っています。
オフの期間に10キロくらいの増量を図るようなものですが、(それ増えているのは体脂肪では?というのは一旦置いておきます)
それに対し、モビリティ・スタビリティが変わっていなければ、コントロール出来ないレベルのパワーがついてしまっている状態ですので、怪我のリスク増大やパフォーマンス低下を招きます。
また、「モビリティ・スタビリティ・ムーブメント」・「パフォーマンス」に比べてスキルが高過ぎるパターンの、アンバランスなパフォーマンスピラミッドも存在します。
これは、いわゆる怪我さえなければ…という選手に多い特徴と言えます。
トレーニングの練習に比べて、技術練習が圧倒的に多過ぎる場合にこのようなアンバランスなパフォーマンスピラミッドを招きますので、日本人選手には非常に多いと思います。
特に育成年代の中学生や高校生は、トレーニングに対する意識が低く、技術が多い傾向はあると思いますので、指導者からこのパフォーマンスピラミッドという概念を教えてもらうだけでも違うと思います。
パフォーマンスピラミッドまとめ
今回ご紹介したパフォーマンスピラミッドは私個人の考え方ですので、トレーナー・インストラクター・セラピストがオリジナルのパフォーマンスピラミッドを作成し、自分のアプローチ方法や考え方を明確に示すのに使うと便利だと思います。
ただ、大まかに意図していることは、どのパフォーマンスピラミッドでもそこまでお変わらないと思いますので、バランスよくトレーニング出来るのが理想だと思います。
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